昨年末にはついにフジテレビの番組で、地上波に復帰。3月下旬には長男と福岡弁護士会で開催した「薬物依存症と家族」がテーマの講演会の模様を、自身のインスタグラムにアップ。覚醒剤で地獄に落ち、自身の体験とその家族が抱え続けてきた苦悩を赤裸々に語る――。
そんな積極的な啓蒙活動を行っているのが、田代まさしである。
田代はかつて、近所の男性宅の風呂を覗いたとして軽犯罪法違反で現行犯逮捕され、その後、自宅から覚醒剤が発見される。覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されたのが、2001年12月だ。懲役2年、執行猶予3年の判決が下されたが、2004年9月には再び、覚醒剤及び銃砲刀剣類所持等取締法違反で現行犯逮捕され、懲役3年6カ月の実刑判決を受けた。
当時はまだ、交流があった芸能人の中には、支援の手を差し伸べようとする者が少なくなかった。例えば涙ながらに語った美川憲一のように。
「(刑務所から)出てきたら私のところに来てちょうだい。付き人でも何でもさせて、イチから叩き直してやるわよ。立ち直ってほしいの、お願いだから…」
ところが2010年9月の違法薬物所持による3回目の逮捕で、それまで田代を支援してきた芸能関係者の多くが彼のもとを去り、田代自身も3年半の府中刑務所暮らしを余儀なくされることになった。
田代は出所後の2015年3月18日、東京・阿佐ヶ谷のライブハウス「ロフトA」で、著書「マーシーの薬物リハビリ日記」発売イベントと記者会見を行った。会場に現れた田代は、刑務所内での規則正しい生活のおかげで、逮捕前の激ヤせした姿から一変。健康的な笑顔を見せて、こう語ったものだ。
「過去の薬物事件の時は『もう二度とやりません』と言いながら、自分の決意さえあれば薬物依存から脱することができると…。でも薬物依存の怖さは、そういう決意だけでは克服できないこと。以前は、また手を染めてしまうと家族やファンに迷惑がかかる、その人たちのために頑張ろうと思っていた。だけど今は、自分のために頑張ろうと考えています」
この発言からわずか4カ月後の同年7月、今度は駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとした東京都迷惑防止条例容疑で書類送検。これで悲願だった「ラッツ&スター」再結成計画がご破算になり、さらに2019年11月には再び覚醒剤所持容疑で逮捕された。覚せい剤取締法違反で3回、違法薬物所持での逮捕は4回目となった。
2022年10月に釈放された田代は現在、講演活動のほか、ユーチューバーとしても活動しているが、高校在学中に最初に逮捕されてから、繰り返される逮捕で社会の厳しい目に晒されてきた息子は、それでも深い葛藤を抱えて、父との関係に向き合い続けてきた。田代には信じてくれた息子を裏切ることのないような人生を歩んでほしいと願うばかりだ。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。