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記事全文を読む→【世界陸上の悲劇】「I did not move!」トラックに寝そべって猛抗議!レースを1時間中断させた「フライング失格」引退事件/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
連日、世界のトップアスリートたちによる激戦が繰り広げられている世界陸上。緊張の中での白熱したレース展開ゆえ、アッと思わせるハプニングが続出しているが、とりわけ印象的だったのは、9月15日の男子マラソンでの超珍事だろう。
小山直城、吉田祐也、近藤亮太が出場したこのレースは午前7時30分。定刻通りにスタートした。ところがピストル音と同時に走り出す選手たちに「ストップ、ストップ!」のアナウンスが。どうやら号砲よりも前にスタートを切った選手がいたため、スタートやり直しの事態になったのである。
この事態に解説者の高橋尚子は「今まで見たことがない光景ですね」とビックリ。レースはシンブ(タンザニア)とペトロス(ドイツ)の一騎打ちとなり、最後は2人同時にゴールして、タイムはともに2時間9分48秒。「胸の差」で軍配がシンブに上がる壮絶なラストに、高橋とともにを務めた青山学院大学陸上競技部の原晋監督も「こんなの見たことない」と驚きを隠せなかった。
1回目が誰であれ、2回目にフライングをした選手は即失格。陸連がそんな厳しいルールに改定したのは、2003年のことだ。この年のフランス・パリ大会で、悲劇は起こった。
男子100メートルの2次予選、第2組。1回目のスタートで、3レーンのドワイト・トーマス(ジャマイカ)がフライングする。緊張みなぎる2回目。号砲で各選手が一斉に飛び出した。しかし、導入された機械がすぐに「フライング」と判定。選手たちは、誰がフライングしたのかわからない。レッドカードを手に、選手に近づく審判員。失格が宣言されたのは、ジョン・ドラモンド(米)だった。
ドラモンドは世界陸上で4×100メートルリレーで2度、シドニー五輪でも金メダル獲得経験を持つ34歳のベテラン。突然の失格宣告に、唖然呆然である。納得できず、必死に「自分じゃない」と訴える。しかし、改正された「ピストルが鳴り、10分の1秒より速くスタートした選手はフライングとみなす」の定義によれば、ドラモンドの反応は「他の選手よりはるかに早い0.052秒」。判定は覆らなかった。
なおも審判団に食い下がるドラモンドはトラックの上に寝転び、テレビカメラに向かってこう叫んだ。
「I did not move!(俺は動いていない!)」
この騒動で、レースは約1時間も中断。第2組のレースは後回しにされ、国際陸連から失格処分を受けることになったドラモンドは事件後、競技から引退することになった。
確かに陸上の短距離は、0コンマ何秒を争う熾烈な戦いだ。フライングの条件は、誰もが同じであることは言うまでもない。とはいえ、ルール改定後、初めての大会での、まさかの失格と引退は、今も世界陸上の歴史の中で、悲劇として語り継がれている。
(山川敦司)
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