芸能
Posted on 2026年01月18日 10:00

〈立川談志「最後の弟子・立川談吉」が書く「最期の時」〉第2回(1)家元、元気なの?元気ではない…

2026年01月18日 10:00

 談志が死んだ──誰にも漏れていなかったはずなのに、どこから嗅ぎつけたのか、斎場には大勢のマスコミが群がっていた。談吉は生前の師匠の言葉を思い出す。「俺が死んだ時は黄金餅のお経でいい」。噺は覚えていないが、中に出てくるお経は覚えていた。金魚ぉ~金魚ぉ~。小声で唱える談吉だった。

 2011年11月22日。この日はご親族の方がお別れをする日と伺っていたので、師匠の元を訪ねることはなかった。

 小僧は立川幸之進兄さんにいただいたお仕事で、福祉施設での落語会に行っていた。幸之進兄さんは談幸師匠のお弟子さんで、今でも大変お世話になっている。温厚で優しい人でお酒が入ると人格がガラリと変わるタイプの芸人だ。誰かの不幸やしくじりを肴にして、悪魔のごとく甲高く笑いながら上品にお酒を嗜む姿を見るたびに、なんて粋な人なのだろうといつも感心をしている。当時は立川流にいたのだが、色々あって現在は落語芸術協会に所属している。

「家元どう、元気なの」

「まあ元気ではないですね」

「そうだよね、心配だね」

 実は昨日死んじゃいましてなんて言えないが、噓もつきたくないのでお茶を濁した。幸之進兄さんは人との距離感や空気を読むのが上手な人なので、何かを感じたのかすぐに話題を変えてくれた。

「今日何やる」

「しわい屋、いいですか」

「いいよ」

「しわい屋」はケチな人がよりケチな人にケチの極意を教わる噺だ。10分くらいの短い噺なので使い勝手が良い。兄さんは「転失気」だったか。

 正直言うと、この日のことはあまり覚えていない。なので自分がしわい屋をやったかどうかも正確ではない。どんなに思い出そうとしても何も出てこない。私にとって空白の一日なのだが優しい幸之進兄さんのことだ、会が終わった後にきっとお食事に誘ってくれたに違いない。

 兄さん、あの時は豪勢なスッポン料理とキャビアの煮っ転がし、大変ご馳走様でした。

立川談吉(たてかわ・だんきち)1981年12月14日生まれ。北海道帯広市出身。2008年3月に立川談志に入門。11年6月に二ツ目昇進。12年4月に立川左談次門下へ。18年7月に立川談修門下へ。26年3月1日に真打昇進「立川談寛」襲名予定。

写真/産経ビジュアル

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2026年08月29日 07:00

    ダブル不倫スキャンダルで一躍、その名を浸透させた元宝塚女優・花乃まりあに、さらなる荒波が襲いかかっている。8月まで上演されたミュージカル「愛の不時着」でダブル主演した三山凌輝との「不適切な関係」報道からおよそ1カ月が経過したが、花乃を取り巻...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    政治
    2026年08月29日 10:30

    ウクライナ東部の前線後方で、強烈な閃光が走る。通信は途絶え、放射性物質を含む雲が国境方向へ流れ始めた。欧州各国の放射線量モニターが跳ね上がり、NATOは緊急協議に入る。原油先物は急騰し、株式市場は暴落。北京では習近平政権が対応を迫られる――...

    記事全文を読む→
    社会
    2026年08月31日 20:30

    日本のホテルに泊まっていて「チェックアウト時間が早すぎる」と感じたことはないだろうか。日本では「10時チェックアウト、15時チェックイン」という設定が今も多い。ところが海外では「12時チェックアウト、15時チェックイン」をスタンダードにして...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/1発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク