芸能
Posted on 2026年01月18日 18:00

原田龍二「誰がなんと言おうと霊はいる!」〈今週の龍言〉90年代のドラマ現場では、ディレクターが飛び蹴りしていた

2026年01月18日 18:00

 今回は、昭和世代とZ世代の価値観のギャップについて考えてみたいと思います。「コンプライアンス」などという、少し前までは聞き慣れない言葉を誰もが当たり前に発すること自体が、今の世相を象徴していると思うんですよ。

 でも、僕自身はそういったジェネレーションギャップをあまり意識していません。なぜなら、この世のあらゆるものは「諸行無常」だと思っているからです。時代が移り変わっていくのは当たり前のことだと考えています。

 テレビドラマを例に挙げれば、90年代の現場と現在の現場との具体的な違いは、ズバリ暴力の有無でしょうね。90年代のドラマ現場ではAD(アシスタントディレクター)が蔑まれ、暴力を振るわれてなんぼというような風潮がありました。あの頃は演者が見えるところでも暴力行為が堂々と行われていましたね。僕もディレクターがADに飛び蹴りをしている現場を見たこともあります。当時はそうした光景を見ても「ここも熱い現場だな」と感じるくらいで何とも思いませんでした。

 飛び蹴りの目撃から30年近く経過した現在、そういった現場には一切遭遇しません。演者もスタッフもその辺は意識してるし、台本にも「お互いにリスペクトを持ってやりましょう」といった注意事項が書かれているくらいですからね。

 とはいえ、「90年代と現在の現場、どっちが好きか?」と問われれば、僕は昔の現場のほうが好きかもしれませんね。もちろん、パワハラを肯定しているわけではありませんよ。弱い立場の人間への暴力が許されるものではないと思います。ですが、あの頃の人と人とがぶつかり合うヒリヒリ感、制作過程に多少の問題があっても「いい作品を創る」ということを最優先していた心意気が好きでした。

 そもそも我々は視聴者の心に訴えかける仕事をしています。もっと剝き出しで、もっと異常であっていい。狂った世界を見せることによって、人は心を動かされるわけですからね。しかし今の世の中はそれを許しません。全方向に気を遣いながら感情や行動を枠の中に収め、公私ともに公務員的な優等生を演じきることが求められます。

 こうした「コンプライアンス至上主義」の状況は、常識とは無縁で生きていて、ハチャメチャだけど、芸能の才能だけはある人たちの手足をも捥も いでしまっているのかもしれませんね。

 今も昔も芸能の仕事をやりたいと思う人間は、本当に芸能が好きという思いでやって来ます。Z世代の人たちも、かつては低賃金、重労働、長時間拘束される、といった時代があったということを知ってると思うんですよ。

 だから僕はよくADの子に「将来、どうなりたいの?」と聞くんです。すると「演出家を目指しています」と答える。ちゃんとしたビジョンを持っているんですよね。

 現在、概ね低予算で作られるVシネマの現場がどうなっているかはわかりませんが、ドラマの撮影状況はそれぞれです。

 僕が年1回ペースで出演させていただいている「相棒」(テレビ朝日系)に関しては深夜の撮影はありません。ただ「相棒」は特殊なケースなんです。前にも話しましたが、主役が来たら、すぐに撮影が始まるわけではなく、まず演者、スタッフ皆で他愛のない話をするなどして場を温める“アイドリング”の時間が必ずあります。

 やはりこの世界で50年近く主役を張ってきた水谷豊さんという存在があまりにも大きい。水谷さんは「俺がしてやっているんだ!」というところを絶対に見せない。そこなんですよね。それを見せた瞬間に見透かされて、「ああ、そういう人だな」と思われてしまう。どこまで豊さんの影響が及んでいるのか分からないくらい、「相棒」チーム全体がお互いを尊重する雰囲気になっています。

 現場の雰囲気作りもさることながら、豊さんの仕事っぷりには痺れます。70歳を過ぎた役者さんで一言一句セリフを間違えないという方はほとんどいません。でも「相棒」の監督が言うには「豊さんはどんどんクオリティが上がっている。信じられない」と驚いていました。それがいい緊張感を生んでいるのかもしれません。「あれだけやっている豊さんの前で粗相はできない」という気持ちが誰にも出てくるわけです。だから、豊さんの現場では、昨今問題になるような有名タレントによる共演者やADへのハラスメントの類いは起こりえません。

 とはいえ、悲しいかな、いまだにハラスメント問題が表沙汰になることがあります。この表沙汰になるか、ならないかは「運」の要素も大きいのではないでしょうか。

 ただ、その運も平等ではないと思うんですよ。これは今までいろんなお坊さんが言ってますけど、普段いいことやってる人はいいことがあるし、悪いことやってる人には悪いことが起きるものです。きっと、「徳を積む」ということなのでしょう。

 ただ「ボーッと」してるだけでは運はつかないと思うんですよ。運を持ってる人は、みずから運を呼び寄せているのでしょう。普段からスタッフや演者にリスペクトされてる人物は、いきなり告発されたりはしないのではないでしょうか。

 僕は、末端の立場の人をすごく大事にします。それは立場的にということではなく、見ていて一番大変そうにしているからです。

 もし自分がその立場だったら、優しい言葉の一つもかけてもらいたいと思いますからね。そうされたら、人間この人のために頑張ろう、と思えるものです。逆に足蹴にされたら絶対に忘れないですよ。それもその人の初めての現場だったら特にね。

 僕は若い頃から誰とも違っていました。今も、同い年の役者さんとは全然違うなと思います。年を重ねるごとにどんどん価値観が違ってきているのかもしれません。次回もその辺の話を。

原田龍二(はらだ・りゅうじ)1970年生まれ。東京都出身。92年ドラマ「キライじゃないぜ」で俳優デビュー。「水戸黄門」「相棒」シリーズなど出演多数。温泉バラエティ「湯一無二」(MX)のほかユーチューブ「ニンゲンTV」ではゴーストハンターとしても活躍中

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