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記事全文を読む→アカデミー賞「助演男優賞」ショーン・ペンは世界最高レベルの俳優だった/大高宏雄の「映画一直線」
第98回米アカデミー賞で、レオナルド・ディカプリオ主演の「ワン・バトル・アフター・アナザー」(以下、「ワン・バトル」)が作品賞、監督賞、助演男優賞など最多の6部門受賞を果たした。
昨年のこのコラムで「近年最高の作品」「映画史上に刻まれる作品」と書いたが、そのとおりになった。いささか嬉しい。
とはいえ、アカデミー賞に限らず、あまたの映画賞を全面的に信用することはできない。選考が最大公約数的になることがあり、無難な作品で固まることが結構あるからだ。もっとも、そのあたりを読み込むのも面白い。
特にアカデミー賞の場合、関係する製作会社や配給会社の「ロビー活動」などが取りざたされる。興行面や話題性などの効果が大きいため、賞を狙って様々な「活動」が行われるのだ。
それを前提にしつつも、今回のアカデミー賞は、卓抜な選出を行ったと思う。助演男優賞に「ワン・バトル」のショーン・ペンが輝いたことである。
彼の役柄を指して「変態軍人」との言い方を「この国」のSNSなどで見かけた。自身の性欲から女に入れあげ、とことん食らいつく。そこだけを表面的に見れば、確かにそうなるかもしれない。
女のほうが仕向けたとはいえ、焦点が定まっているのか定まっていないのか、よくわからないペンのギラギラした目つきと、深い皺が刻まれ、闇の深さを感じさせる表情は、確かに「変態」にも見える。
ところが、コトはそこに留まらない。おかしな言い方になるが、単なる「変態」を超えているのだ。性欲と権力欲がパラレルになっている。性欲は権力欲へのひとつの引き金的な要素だったとみていい。
彼には内面がないようだ。時代に翻弄された哀れな人物でさえない。それさえ超えている。ある意味、人間の醜さの最終形、行き着くところまで行ってしまった人物なのではないか。
映画は彼を容赦しない。ラストで彼の無防備な頭の上から、シラーっと鉄槌を振りかざしたかのような仕打ちをする。見ていて心地がいい。多くの人が、その仕打ちに納得するだろう。
ペンの姿を、観客は己と重ね合わせない。自分は彼のような人間ではないと、誰もが思っているからだ。ところが、そうではない。ペンには、誰もがなりうるのである。
権力欲は計り知れない。それは究極、戦争に行き着く。つまり、今やペンは至るところにいるのだ。特に「ワン・バトル」が異様で特殊な世界を描いているわけではない。世界の方が、何物かを超えてしまっている。
ペンはアカデミー賞の授賞式に出席しなかった。メディアによると、ウクライナに行き、ゼレンスキー大統領と会う約束を優先したという。
アカデミー賞を無視したのではない。ペンはまるで、「ワン・バトル」の革命兵士のごとく、果敢に戦っているのだ。役柄を超えて、映画自体の続きをやっているのである。
ショーン・ペン。余人が近づくことさえできない演技の高いボルテージ、リアルな現実における破天荒な行動力において「世界最高レベルの俳優」と名付けたい。米アカデミー賞を見直した。
(大高宏雄)
映画ジャーナリスト。毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)、「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2026年に35回目を迎える。
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