社会
Posted on 2026年05月31日 18:00

山健組「弘道会組員銃撃事件」で再び無罪判決 中田組長が歴代トップ「司法の呪縛」を解き放った(1)想定外の判決にざわめく傍聴席

2026年05月31日 18:00

 分裂抗争にあって異彩を放つ銃撃事件に司直の回答が示された。事件後、六代目山口組に帰参した山健組・中田浩司組長に対し、一審に続き二審でも無罪判決が下されたのだ。山口組内で重要な組織であり続けた山健組で繰り返された、トップと当局との“闘争史”に、新たな1ページが刻まれたのだ。

「本件は控訴棄却とする」

 マスコミや警察関係者が詰めかけた5月12日の大阪高裁201号法廷で、裁判長がそう発した瞬間、傍聴席が一気に慌ただしくなった。想定外の判決にざわめく中、記者たちが第一報を報じるために我先にと席を立ち始めたのだ。インターネットで第一報が出たのは、開廷時刻の午後1時半から、わずか1分後のことだった。このことからも判決の衝撃の大きさがわかるだろう。

 この日開かれたのは、六代目山口組(司忍組長)の分裂抗争下で19年8月に発生した、「弘道会系組員銃撃事件」の控訴審判決公判だった。事件は新神戸駅からほど近い三代目弘道会(当時)の関連施設前で起きた。スクーターに乗り、フルフェイスのヘルメットを被ったヒットマンが同会系組員に向け銃弾を撃ち込み、同組員は右腕を切断する重傷を負った。そして同年12月に実行犯として逮捕されたのが、当時は神戸山口組(井上邦雄組長)の中核組織であった五代目山健組の中田浩司組長(現・六代目山口組若頭補佐)その人だった。だが一審では中田組長が実行犯である可能性に言及しながらも、「直接的な証拠がなく、別人の犯行である可能性が否定できない」として無罪判決が下っていた。これを不服とした検察が控訴していたのだ。

 中田組長は一審判決後に現場復帰し、25年1月に幹部から若頭補佐に昇格、執行部入りする。そこから約1年後の今年2月、当局の威信をかけた控訴審が始まったのだが、早々から波乱が待ち受けていた。司法記者が言う。

「検察側が新たな証拠の採用、そして新証人の召喚を求めましたが、裁判長はすべてを却下。公判は3分で終了し、審理が行われないまま、この日の判決に至ったんです」

 山口組事情に詳しいジャーナリストが言う。

「控訴審開始直前の1月に、六代目山口組直参でETC不正利用の罪に問われ、一審で無罪判決を受けていた二代目章友会・新井錠士会長の控訴審があったのですが、審理なしで地裁への差し戻し判決が出ていました。そのため中田組長のケースでも同様に差し戻しになるのではないか、という見方が支配的でした」

 審理を尽くそうとしない高裁側の態度も手伝い、業界内でも差し戻し判決が有力視されていた。分裂抗争における重大な事件で、司法当局がそうやすやすと無罪判決は出さないだろう、という「ヤクザ不利」のバイアスがかかっていたことも否定はできないだろう。

 しかし、被告側の「犯人性」が争われる裁判で、凶器や犯人のDNAなどの直接証拠がない、という事実は思った以上に重かった。裁判長は判決理由を次のように語った。

「(一審で検察が証拠として提出した防犯カメラのリレー映像は)不鮮明で、中田組長が実行犯と同一人物と認定するのは困難。(犯行時に使用した)黒色の原付、白色ビッグスクーターも、(山健組傘下の)健竜会の関係者なら誰でも使用できる。中田組長が実行犯と同一であると推認する根拠としては非常に弱い」

 六代目山口組にとって価値ある勝利になったのだ。

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