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記事全文を読む→ダンプ松本が引退試合で「号泣謝罪」した超過酷な「ヒール道」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
1988年2月25日、川崎市体育館。その夜、女子プロレスのリングで起きた出来事は、今も往年の女子プロレスファンの間で「歴史的事件」として語り継がれている。
当時、女子プロレス界は「ダンプ松本」という怪物に支配されていた。「極悪同盟」を率いる彼女は、フォークや鎖を手にリングを血の海へと変え、そのやりたい放題の姿が、全国の少女たちにとって悪夢と化していた。
彼女が現れるだけで会場には悲鳴と罵声が飛び交い、実家には連日、カミソリが入った脅迫状や石が投げ込まれる。その「ヒールぶり」は単なるプロレスの演出を超え、社会問題にまで発展したのである。
そんな「憎悪の権化」がこの日の引退試合で選んだ相手が、長与千種・ライオネス飛鳥だった。盟友・大森ゆかりとタッグを組んだダンプは大乱闘を繰り広げ、リングを血に染めると、試合は13分50秒でノーコンテスト(無効試合)に。するとマイクを手に取ったダンプが、宿敵・長与を再びリング中央へ呼び寄せたのである。
会場に張り詰める、ピーンとした空気。次はどんな残虐な攻撃が始まるのか…。ファンが固唾を飲んで見守る中、ダンプが放ったのが、誰もが予想しなかった言葉だった。
「クラッシュ・ギャルズのファンの皆さん、今までチーちゃん(長与)やトンちゃん(ライオネス飛鳥)のことをいじめて、すいませんでした!」
静寂に包まれる会場。耳を疑ったファンは言葉を失い、やがてリングから号泣する声が漏れ始める。そりゃそうだろう。あの冷酷無比な悪の象徴が、リングの上で子供のように泣きじゃくり、長年の戦友に詫びを入れたのだから。
試合会場では母親が頭を下げて回っていた
ダンプが貫いてきた徹底した「ヒール道」は、過酷というほかなかった。私生活でもヒールを演じ続けるために孤独と闘っていた彼女は街を歩くことすらできず、試合会場で母親が長与や飛鳥に頭を下げて回っていたというエピソードは、今となっては有名な話だ。
だがそれは、彼女が「悪」という仮面の下で、どれほど大きな代償を払っていたかを如実に物語っている。憎まれ、罵られ、孤独に耐え抜いた末にたどり着いた引退のリング。そこで彼女が見せた涙は長年、積み重ねてきた憎悪という名の壁をブチ壊したのである。
それは同時に、プロレスラーが人生の全てを懸けて演じた、最高のフィナーレだった。リングでの謝罪の裏には、悪役に徹し続けた女の壮絶な孤独と、それを支え続けたライバルへの深い敬意が隠されていた。
とはいえ、ヒールを憎んでいたはずの観客が最後に泣き崩れたこの壮大な演出に、はからずも女子プロレスが持つエンターテインメントという魔法を感じさせられたのだった。
(山川敦司)
アサ芸チョイス
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