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記事全文を読む→【魔の立入禁止地帯】「死亡者76人」を出しても釣り人が次々と警告を無視して侵入する茨城「鹿島港の防波堤」
「立入禁止 既に、76名の死亡者を出す事故が発生しています」
茨城県神栖市の鹿島港南防波堤には、こう記した警告看板がある。国土交通省鹿島港湾・空港整備事務所、鹿島海上保安署、神栖警察署、茨城県鹿島港湾事務所が連名で注意を呼びかけている。「76」という数字の部分だけが白く、他の文字とは色が違う。
危険なのは南防波堤だけではない。同じ鹿島灘に面した鹿嶋市平井の鹿嶋新港北防波堤でも、今年5月に釣り人が海に転落し、死亡している。立入禁止のこの場所で、またも命が失われたのだ。
直近では11月1日午後3時半頃、北防波堤で釣りをしていた20代の男性4人が大波にさらわれて海に落ちた。2人は付近のサーファーに救助され、無事だった。残る2人のうち1人は同日夜、もう1人は翌2日朝に発見され、いずれも死亡が確認されている。
鹿嶋市には台風31号の影響で午前中から波浪注意報が出ており、現場の堤防は立入禁止だった。南防波堤や中央防波堤はうねりや高波で波をかぶることが多く、転落死亡事故が過去に数十件、起きている。南防波堤にはゲートや立入禁止の看板を設けているが、無断侵入が絶えない。
それでも釣り人が繰り返し入り込むのは、そこが絶好の釣り場だからだ。海上保安庁の資料では、鹿島火力発電所の放水路周辺について、温まった冷却水と潮通しのよさで魚が集まる一方、流れが速く、落ちれば沖へ流される危険があると説明している。魚を寄せる速い流れは、落ちた人を沖へ運ぶ流れにもなるからだ。
落ちたら自力での抜け出しも救出も難しい
予報で使われる波高は「有義波高」と呼ばれ、高い方から3分の1の波を平均した値で、最大の波ではない。同じ海の状態でも、1000波に1波は予報の2倍近いものが押し寄せ、それがいつ来るかは分からない。防波堤の付近では波が複雑に重なり、かぶった波の衝撃や、足をすくわれることで人が転落する。
落ちた先がテトラポッドなどの消波ブロックなら、事態はさらに厳しくなる。消波ブロックは積み重ねた時にできる隙間で波の力を弱める構造物だ。大きいもので1個の高さが4メートルを超え、海面付近は海藻で滑りやすくなる。
国交省港湾局監修の「海辺の安全対策マニュアル(案)」は、足場が悪く、転落すれば体を打って重傷を負う危険があると指摘する。打ち寄せる波で体が隙間の奥へ押し込まれると、自力で抜け出せなくなることがある。見つかっても救出は難しく、波の力を弱めるための隙間が、人を閉じ込める穴になるのだ。
鹿島港で釣りが認められているのは、茨城県の釣り施設「鹿島港魚釣園」だけで、利用者には救命胴衣の着用を求めている。乗合の遊漁船もあり、立入禁止の防波堤に入らなくても釣りはできる。
外海に面した防波堤は、波を受け止める場所として作られている。立入禁止の先で竿を出すことは、その波に身をさらすことでもあるのだ。
(ケン高田)
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