芸能

森昌行が北野監督に説いたプロデューサーの流儀

「30秒話をするのに1週間待つこともあったよ」

 映画監督・北野武をプロデューサーとして支え、芸人・ビートたけしを所属事務所社長としてマネジメントする森昌行氏(59)。「芸能界の豊臣秀吉」との関わりを「軍師・森」にたっぷり語ってもらった。

 私とたけしさんが常に行動を共にしていると思っている方が多いのですが、それは大きな誤解。仕事以外での接点はほとんどないんですよ。直接話をするのは月に3~4回程度です。

 ディレクターと芸人という関係だった時期は、一緒に酒を飲み、そのままたけしさんのマンションに転がり込むのが日課でした。こっちはもう泥酔しているので、そのままゴロンです。ところがたけしさんは、そこからシャワーを浴びて酔いをさっぱり醒ましてしまう。それから、枕元に常備してあるネタ帳にびっしりと書き込みをするんです。明け方に私が目を覚ますと、いつもネタ帳に向かっていました。飲みの席からは仕事は生まれない。仕事はシラフで会ってきちんと話し合わなければダメだということを、この時期にみっちり教えられました。

 そんなこともあって、1992年に私がオフィス北野の社長に就任してからは、個人的関係を避けるように意識しました。もちろん仲が悪いわけじゃありませんが(笑)。お互いの距離感をどう保つかというのは常に考えています。

 プロデューサーとしては、クリエイティブサイドとビジネスサイドの両方の声に耳を傾けなければなりません。ビジネス側が製作現場に直接モノを言うということはあってはならない。逆に現場が出資者側に金銭面の不満などをぶつけられても困る。そこでプロデューサーが両者のブリッジ(橋渡し)役になるわけです。

 例えば一昨年の「アウトレイジ」。間近の3本は、たけしさんが監督としての作家性にこだわった「三部作」と言われるものですが、興行的には成功とは言えませんでした。

 たけしさんとしてはもう1作、その路線で押したい気持ちがあったかもしれません。ただ、プロデューサーとしては興行面も考えます。他社に出資を募る以上、ビジネスとして成立しない作品を4本続けるわけにはいかない。そのためにはエンタメ性の強いバイオレンスアクション作品でいきたかったんです。

 そういう時の相談や話し合いのタイミングについてはすごく考えます。仕事を気持ちよく受け入れてもらうために会うわけですから、タイミングを慎重に選びます。30秒の会話のために1週間待つこともある。

 アウトレイジを提案した時も、興行的な話を前面に出すことはしませんでした。たけしさんという人は「ここから先に前に行ってはダメですよ」と言われれば言われるほど、押しのけて前に行く人ですからね(笑)。「今後、映画製作を継続させるためにも、今回はこういう作品でいきませんか」という持っていき方をしたのを覚えています。

 黒田官兵衛のような人と比べられるのはおそれおおい話ですが、プロの仕事を成し遂げたという点では憧れる部分もありますし、私もプロデューサーとして、そうありたいと思っています。

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