芸能

千葉真一、深作欣二の初時代劇の教えに感謝

 千葉が演じた大友勝利は、シリーズ屈指の破天荒キャラとして人気を得た。その影響力は絶大で、後のアウトロー映画でも「千葉真一の大友のような」と指定されるひな型になった。ただし─、

「深作組の映画ならどんな役でも二つ返事だけど、これだけは1週間、悩みに悩んだね」

 これには伏線があり、当初は予科練帰りの山中正治を千葉が、凶暴な大友を北大路欣也が演じるはずだった。これに北大路が変更を求め、東映幹部が千葉の説得に動く事態となった。

 深作の追想によれば、実は「海軍」(63年/東映)でも同じように北大路が千葉の役との変更を求めている。東映にとっては戦前からの大スター・市川右太衛門の御曹司であり、これを北大路の主演第1作として要望を聞き入れる。それから10年後の再現に深作は千葉の心境をおもんぱかったが、どこか「策略」があったようだと千葉は言う。

「監督がどう考えているのか‥‥あれこれ張り巡らせていったら、これは俺に大友勝利をやらせたがっているんじゃないかと思ってね。まあ“御曹司”には悔しい思いをさせられたけど、結果的に俺が大友を演じておもしろくなったと思う」

 大好評を博しながら、千葉は同時期に空手映画が続いていたこともあり、正式な「仁義─」シリーズの出演は1作のみ。ただし、深作の遊び心が「新仁義なき戦い 組長の首」(75年/東映)で顔を出す。スタジオを見学していた千葉に、深作が「ちょっと出ようか?」と言うのだ。

「バーテンダーの衣装を着せられて、バーカウンターのシーンでカメラがパンしていく。と、酒を差し出すシーンで俺が一瞬だけ映るわけ。クレジットも出てないから、観客は『あれ? 今の千葉?』ってあっけにとられていたね」

 この「仁義─」をきっかけに東映のエース監督となった深作は、SFなどあらゆるジャンルを貪欲にこなすようになる。そして78 年、東映が12年ぶりに復活させた大型時代劇「柳生一族の陰謀」もまた、深作が初めて時代劇のメガホンを取っている。

 同作は千葉が深作に提案した「裏柳生」がベースになっており、そのため企画が決定すると深作は、真っ先に千葉に伝えた。

「あれ、やるよ。お前さんが柳生十兵衛だから」

 ライフワークと巡り会った千葉は、深作がシナリオのために定宿としている京都の旅館に何度も通った。差し入れを持って部屋の隅に座り、深作と脚本家たちの討論に耳をそばだてた。

「いや、違うだろ。そのセリフはシーン6のここに入れようよ」

 これが深作流の「脚本作りのリズム」だと思った。後に監督業にも進出した千葉にとって、このことが最も感謝した教えだった。

 そして公開された「柳生一族の陰謀」は大ヒットし、同年、再び萬屋錦之介の主演で「赤穂城断絶」が公開される。ただし、興行成績は前作を大きく下回り、群像劇を作りたい深作と昔ながらの時代劇にこだわる萬屋の溝も埋まらない。

 深作の忸怩たる思いは、千葉の柳生十兵衛を伴ってリベンジに向かう─。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
ベッキー玉砕!橋本環奈と天と地の差!絶対王者「あのちゃん」にはもうどんな攻撃も効果なし
2
「ロッテの条件提示拒否」報道…佐々木朗希が引き起こす「第2のカッツ前田事件」
3
「絶景駅総選挙」に鉄道ファンが「タイトル詐欺だ!」大ブーイング「1位・日光駅」はありえない
4
大谷翔平の怒りを買った元木大介に罵声の嵐!謝っても済まない大荒れYouTube
5
巡業の土俵でくも膜下出血!市長を救命した女性看護師に「下りろ!」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」