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記事全文を読む→日本を創った“荒ぶる男”たち<芸能界編>「石原裕次郎・勝新太郎・萬屋錦之助」
役者が一国一城の主だった時代、その豪放なエピソードはどこか愛嬌に満ちていた。芸能レポーターの草分けである鬼沢慶一氏は、戦後を代表する3人の役者と肌でぶつかり合った。
「オニよ、お前、子供は何人だ?」
熱海の温泉旅館で湯船につかりながら、勝新太郎は鬼沢氏に聞いた。
「ウチは1人だよ」
鬼沢氏が答えると、勝新は首をかしげる。
「おかしいな、オレは2人いるんだ。ところが裕サマはゼロだ‥‥」
そうつぶやくと、石原裕次郎とともに立ち上がり、互いの股間をながめながら勝新流の哲学を放つ。
「見ろよ、俺は粗チンで、立派なのは裕サマだ。だけど裕サマには子供はいない。モノの大小じゃないんだ」
鬼沢氏は苦笑しながら、大スターの無邪気なこだわりに感心したという。そして裕次郎、勝新と3人で出かけた温泉旅行では、こんな一幕もあった。
「夕食の時に勝さんが裕さんに『最近、チャンバラやってるんだって?』と聞くんだ。裕さんもようやく時代劇をやりだして、楽しがっていた頃。ところが、勝さんは例の座頭市の主題歌で『♪およしなさいよ~』と歌いだす」
裕次郎が気色ばむと、勝新は時代劇の第一人者らしい言い方をした。
「裕さんに『兄弟、お前さんは港を背に立っているだけで絵になるんだ』と。勝さんは『俺みたいな短足とは違うんだ』と言ったあと、ニヤリと笑って『だけど時代劇は腰で勝負するから、八頭身のお前さんはやめておけ』と忠告したんです」
72年の話である。以来、裕次郎は時代劇の主演をやらなくなり、初のテレビレギュラーである「太陽にほえろ!」(日本テレビ系)に新天地を求めた。
戦後の日本映画界を支えた2人には、飲み屋で大立ち回りを演じたとの逸話が残っている。実は鬼沢氏はその場に居合わせ、事実は異なっていたと証言する。
「渋谷に芸能人しか入れないスナックがあって、そこに裕さんと行ったら、勝さんが先に来ていた。ところが、勝さんが連れていた女の人の足を、たまたま裕さんが踏んでしまった‥‥」
その瞬間に勝新が立ち上がり、裕次郎に向かって「何だ、この野郎!」と言って一触即発。周りの客は、殴り合いは避けられないと、固唾を飲んで見守った。
「そしたら裕さんがニヤリと笑って『兄弟、お前、芝居がうまいな』と。それを受けて勝さんも『いや、裕ちゃんのほうこそうまいよ』って、2人だけの世界を楽しんでいたね」
晩年の裕次郎は、度重なる病魔に苦しめられた。特に81年に発症した解離性大動脈瘤では、生存率3%という厳しい大手術を行う。幸い一命は取り留めたが、術後に自宅に招かれた鬼沢氏は「現実」を知る。
「奥さんの北原三枝さんが一口カツを作ってくれたんだよ。裕さんも食べたそうにしていたので、奥さんが『1つだけよ』と念を押した。ところが、そのカツは味もそっけもない。裕さんは1日に2グラムしか塩分をとってはいけないんだ。裕さんはそれでも、もう一口が食べたくてダダをこね、奥さんが泣きだしてようやく我慢をしていたよ」
もう1人の大物である萬屋錦之介とは、出会いからして不穏な空気だった。錦之介が初めてテレビに進出した「真田幸村」(66年・TBS系)の会見が行われ、全国から放送記者が集まった。ところが会見は何の説明もないまま、30分以上も遅れている。ようやく錦之介らが姿を見せた時、記者団を代表して鬼沢氏が罵倒した。
「いいかげんにしろ! まず遅れた理由を説明しろ!」
これに錦之介が不愉快になり、会見をキャンセル。それから数日後、錦之介の自宅を取材で訪ねると、鬼の形相で扉を開ける。間髪いれず鬼沢氏に向かって「敷居をまたぐな!」と叫び、取っ組み合いのケンカとなった。
「3発殴られて、俺も殴り返した。たまたま来ていた美空ひばりと淡路恵子が『やめて~』と泣くんだ。それでようやく錦之介が握手をして『おもしろかったよ』と言って決着。以来、兄弟分の間柄だよ」
そんな好漢たちはいずれも、若くして世を去った。
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