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記事全文を読む→羽生善治VS渡辺明、将棋界「新ライバル戦記」(2)逃げていった「国民栄誉賞」
世紀の対局現場を再現しよう。10月18、19日の第1局は先手・渡辺、角換わり92手で羽生の勝ちとなる。第2局(10月30、31日。先手・羽生)は相矢倉131手で、続く第3局(11月13、14日。先手・渡辺)も、横歩取り138手で羽生が3連勝。永世七冠が目の前まで近づいた。渡辺はこの時のことを、自身のブログでこう書いている。
〈自分にしては珍しく3~4時間しか眠れませんでした。朝食も食べる気分ではなく、足取り重く対局室へ向かいました〉
だが、ここから怒濤の大反撃が開始される。第4局(11月26、27日。先手・羽生)相掛かり136手で、第5局(12月4、5日。先手・渡辺)を相矢倉117手で、そして第6局(12月10、11日。先手・羽生)を急戦矢倉70手で制し、五分に戻したのだった。
迎えた第7局(12月17、18日。振り駒で先手・羽生)のハイライトは羽生の▲2三歩に渡辺△4二金と寄って、こらえたところからだった。ここで▲6二銀成としておけば、△5三飛なら▲6四金。△5四飛には▲5五金△7四飛△6四金で、次に飛車を取ればはっきり先手勝ちだったと渡辺も認めている。
しかし実戦で羽生が指したのは▲6二金。以下△6五香▲6六歩△5三飛▲6五歩△6七銀成▲同金△5八金▲7八玉△6五桂▲6六金△4八金▲5四香△6二角▲5三香成△同角と展開し、情勢は渡辺へと傾いていくことに。前出・観戦記者が解説する。
「渡辺は△7三桂を△6五桂と跳ねて『難しくなってきました』『後手が負ける形が、それまでより見えにくくなった』と言っている。つまり、羽生に▲6二銀成とされていれば敗戦を覚悟していたのだろうが、異なる展開になって心の中でガッツポーズしたい気分だったのではないか」
ところが窮地を脱した渡辺に緩手が出る。14手後の△6四歩がそれだった。次の▲6六角の詰めろを読み落としていたからで「また負けにした」と思ったが、5分の考慮時間で指した4八の金取りを防ぐ△5九飛成の王手が効く。そしてついに、急戦矢倉140手で投了。途中で2人は8時間の持ち時間を使い切り、秒読みになっていた。
終局の瞬間、廊下を走ってくる報道陣の足音に驚いた渡辺は、
「はっきり負けを覚悟した局面もあった。勝てたのは(秒読みの)1分将棋の中でミスが出なかったのがよかった。手がいいほうにいってくれました」
と振り返っている。
当時の米長邦雄将棋連盟会長はこの日、対局会場に駆けつける予定だった。それが、羽生が永世七冠になれば政府から国民栄誉賞を贈られる可能性があることを知り、東京に残ることになったのだった。
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