政治

歴代総理の胆力「高橋是清」(2)評価「蔵相Aクラス、総理0点」

 しかし、どこにあってもダイヤモンドは光る。結局、引き上げられて、日銀副総裁、最後は総裁にまでのぼりつめた。ここでは、特に日露戦争の際にそれまでの培った外国人人脈を頼り、戦時国債を大量に売りさばいて軍事費捻出に貢献したのだった。

 次はいよいよ、政界からの声である。経済・財政のオールラウンド・プレーヤーとして第一次山本権兵衛内閣、そして原敬内閣で大蔵大臣に引き上げられることになった。また、山本内閣蔵相となったのを機に立憲政友会入りをした。のちに高橋内閣が成立。間もなく総辞職となった直後、貴族院議員としての爵位を辞して、衆議院議員への当選を果たしている。

 総理大臣のイスが回ってきたのは、高橋が蔵相として入閣していた原内閣の原敬総理が暗殺されたことによる。

 原の人気が世論的に抜群だったこともあり、原を支える政友会で原の「次」を誰にするかの議論はまったくなかったのは当然だった。元老の山県有朋や松方正義は第2代政友会総裁でもあった西園寺公望元総理大臣の再登場を策したが、西園寺は体調を理由にこれを固辞、代わりに高橋蔵相の総理就任を強く推したのだった。もとより、無欲恬淡で総理のイスなどは興味がなかった高橋だったが、言うならば国難、イヤイヤながら引き受けると同時に、第4代政友会総裁に就任した。

 しかし、内閣を率いた高橋ではあったが、蔵相としての手腕に比べて、総理としてのリーダーシップ、あるいは実績は極めて乏しいものとなった。

 結局、内閣は212日と短命で総辞職を余儀なくされた。内閣改造を目指したが難航、根回しなどもほとんどなく、結局、政権を放り出してしまったのだった。のちの歴史家の一般的評価は「蔵相としての手腕はAクラスだったが、総理としてはゼロに近い」でほぼ定着している。

■高橋是清の略歴

安政元(1854)年7月27日、江戸(東京)芝の幕府御用絵師の家に生まれる。アメリカ留学。日本橋の芸妓・桝吉(ますきち)と遊蕩三昧生活。総理就任時、67歳。蔵相ポスト都合7度。昭和11(1936)年、「2・26事件」で青年将校の凶弾に倒れる。享年82。

総理大臣歴:第20代1921年11月13日~1922年6月12日

小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。

カテゴリー: 政治   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<老人性乾皮症>高齢者の9割が該当 カサカサの皮膚は注意

    330777

    皮膚のかさつきを感じたり、かゆみや粉をふいた状態になったりすることはないだろうか。何かと乾燥しがちな冬ではあるが、これは気候のせいばかりではなく、加齢による皮膚の老化、「老人性乾皮症」である可能性を疑った方がいいかもしれない。加齢に伴い皮膚…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<中年太り>神経細胞のアンテナが縮むことが原因!?

    327330

    加齢に伴い気になるのが「中年太り(加齢性肥満)」。基礎代謝の低下で、体脂肪が蓄積されやすくなるのだ。高血圧や糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病に結びつく可能性も高くなるため注意が必要だ。最近、この中年太りのメカニズムを名古屋大学などの研究グル…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<巻き爪>乾燥による爪の変形で歩行困難になる恐れも

    326759

    爪は健康状態を示すバロメーターでもある。爪に横線が入っている、爪の表面の凹凸が目立つようになった─。特に乾燥した冬の時期は爪のトラブルに注意が必要だ。爪の約90%の成分はケラチン。これは細胞骨格を作るタンパク質だ。他には、10%の水分と脂質…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

注目キーワード

人気記事

1
あの「わかめラーメン」新CMにゆうちゃみ起用で思う「廃業危機ラーメン店」を救うのはギャル
2
太川陽介が舌好調で明かした妻・藤吉久美子への「暴君ぶり」自宅での料理で激怒した
3
NHK番組は終了…とんだトバッチリでしばらくは新規起用が見送られる「新しい地図」の悲運
4
甲子園出場「21世紀枠」に負けたのは末代までの恥/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
5
巨人・久保康生巡回投手コーチが田中将大「魔改造計画」でつけた「注文」