芸能
Posted on 2021年12月08日 09:59

南田洋子、長門裕之と出会った映画「太陽の季節」で魅せた“大胆艶技”の記憶

2021年12月08日 09:59

 女優・南田洋子が世を去ったのは、2009年10月21日。享年76。その晩年は、認知症に苦しみ、アルツハイマー病と闘う様の記憶が生々しい。ある日は、みずからの症状にいら立ち、また、ある日は、童女のようにすこやかな南田洋子が立ち現われ、有名人の「老い」の実相を世に伝えた、最初ではなかったか。

 夫・長門裕之とのおしどり夫婦ぶりに彩られた芸能生活だっただけに、その落差と隔たりは、見る者に強烈な印象を残したのである。

 テレビに映る南田は、「ミュージックフェア」(フジテレビ系)の司会者であり、テーマ曲とともに、優雅に、そしておっとりとした妻ぶりの南田である。夫の長門も芸能界の重鎮としての風格を備えていたことが今も記憶に新しい。

 その2人が、共演を果たし、実生活での結婚のきっかけとなったのが、映画「太陽の季節」。1956(昭和31)年5月公開の日活映画である。原作は、石原慎太郎の芥川賞受賞作「太陽の季節」。その受賞を巡っては社会現象といえるほどの物議を醸し、戦後青春文学の金字塔とでもいうべき作品である。

 拳闘(ボクシング)部に所属しながら、酒と女に明け暮れる長門が、ガールハントに成功するのが南田。ツンデレ系のお嬢様だが、やがて、魅かれ合う二人である。

 長門の部屋で、サンドバッグを叩きまくる長門の背を思わず抱きしめる南田。ゴングは鳴らされ、一つになるシーンである。南田の胸の膨らみが眩しい。モノクロの映画だが、艶やかな肌と汗を感じる鮮烈なシーンでもある。昭和31年という時代を思えば、大ヒットも、むべなるかなの大胆描写といっていい。しかも、こうした“性愛”が複数回描かれるのである。

 そして、夏が終わり、破滅の足音が…。ラスト近くに、大写しになる南田の目線が観る者に突き刺さる。

「もはや『戦後』ではない」と宣言された、昭和31年に放たれた、ひと夏の「生」と「死」のドラマこそ、「太陽の季節」である。

 思えば、長門裕之22歳、南田洋子23歳。双方共に、青春を経て、朱夏のとば口である「太陽の季節」の入り口にさしかかっていたのである。

(文中敬称略)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/6/24発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク