社会

東日本大震災の悲しすぎる現実/DASH村へダッシュしろ!放射能の中でイノシシ料理食堂の主と会った

 東日本大震災後、現地を取材すべく、私はすぐに岩手・宮城・青森の被災地をグルグルと回った。津波の痕跡を辿ることにした。青森県三沢市淋代(さびしろ)地区にあった保育園に津波の痕跡を見つけ、六ケ所村の尾駮(おぶち)沼にも軽い痕跡があった。そこが北限だったのだろう。

 震源地は宮城県の東に突き出している牡鹿半島の金華山沖だとされているが、そこから三陸沿岸に巨大な津波が襲ってきたということになるし、福島県・茨城県・千葉県にも津波は襲った。

 福島は原発事故のため取材禁止となり、記者やカメラマンは立ち入ることができなかった。それが徐々に解除された11年4月後半に、福島県田村市経由で向かったのが、原発エリアだった。国道沿いに検問所があり、放射線量を計測する機械が置かれていた。

 道端では真っ白なユキヤナギの可憐な花が咲き乱れていて、春の訪れを謳歌しているようだったが、集落には人の気配がない。飼い犬だろうが、それが何匹も「ワン、ワン」と野良犬になって吠えているし、誰もいない住居脇の牛舎では、何頭も飼われていた。

 多くの住民は放射能を避けて会津方面へ避難していたが、家畜にエサを与えるためにはその都度、帰ってこなければならない。が、誰も帰ってこない(帰れない)場合もあったろうし、餓死した家畜も見られた。また、餓死をさせるのが忍びないということで、首輪を外した「野良牛」も少なくなく、野生の牛の出現もニュースになっていた。

 この地にあったのが、日本テレビ系で日曜夜7時から放送されている「ザ!鉄腕!DASH!!」の「DASH村」である。放送ではDASH村は架空の村ということになっているが、番組を見れば、地元の方の方言で福島県のどこかで撮影していることはすぐに分かる。

 目の前に、そのDASH村があった。身長よりもはるかに高い木の門が閉められ、外からチラリと見える中の様子を窺うものの、農家のような建物が見えるだけだった(写真)。周囲にあった民家を訪ねてみても、どこも不在で話を聞くこともできなかった。

 小高い峠のある赤宇木地区は、県内で最も線量が高い地区として有名になっていた。周囲をグルグル回っていると、国道沿いに生きたイノシシが入った檻が置かれ、エサを与えている初老の男性と会った。イノシシ料理を出す食堂のご主人で、避難している会津から数日おきにエサを与えに来ているという。食堂に入れてくれて、ゆっくり話を聞くことができた。

「震災後は店の前の道路に、避難しようとする車が溢れて大渋滞になったのさ。でも、避難はしないという人も少なくなかったね。大体がペットを避難所に連れていけないから、という理由でさ。それで放射能で病気になったら目も当てられないよ。可哀そうすぎるって。オレか? 実はガンでな、放射線を食ってるんだ。放射能に負けねぇから。ガッハハハハ」

 あの豪快な笑い声が、今も忘れられない。

(深山渓)

カテゴリー: 社会   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「致死量」井上清華アナの猛烈労働を止めない「局次長」西山喜久恵に怒りの声
2
完熟フレッシュ・池田レイラが日大芸術学部を1年で退学したのは…
3
またまたファンが「引き渡し拒否」大谷翔平の日本人最多本塁打「記念球」の取り扱い方法
4
打てないドロ沼!西武ライオンズ「外国人が役立たず」「低打率の源田壮亮が中心」「若手伸びず」の三重苦
5
京都「会館」飲食店でついに値上げが始まったのは「他県から来る日本人のせい」