芸能

村上春樹 酩酊した「ドイツ“大麻”パーティ」の一部始終(4)ひとつの壁に当たっている時期だった

「むしろ、あの世代で文化活動をしている人物で大麻などの違法行為を経験していない人たちのほうがモグリと言える時代だったのです。それは『カルチャー』だったのです」(永江氏)

 そこには「違法」とか「有害」という概念はなく、むしろ自然で体にいいというイメージすらあったようだ。それは村上氏のこのような言葉からもうかがえよう。

〈経験的に言って、マリファナというのは煙草なんかよりも遥かに害が少ない。煙草と違って中毒性もない。だからマリファナをちょっと吸ったくらいで、まるで犯罪者みたいに袋叩きにあうなんていう日本の社会的風潮は、まったく筋が通らないのではないか〉(「うずまき猫のみつけかた」)

 このような主張をするのは村上氏だけではない。大麻は体にいいので合法にせよと主張するような人も少なくないのだ。その一方でこのような考えが、「危険ドラッグ」の爆発的な増加に影響をしているという見方もある。今年上半期で全国の警察が摘発したのは128事件と、すでに昨年1年間の摘発数である125事件を大きく超えているのは、「危険ドラッグ」に含まれるハーブが体にいいという勘違いがある、と専門家は指摘している。

 このような日本の社会的風潮を、村上氏はどう捉えるのか──。

 そして、もう一つシュナイダー氏が30年前の写真を公開した理由は、このドイツ滞在が村上氏の作品に何かしら影響を与えたかもしれないと考えたからだ。というのも、この時に同行した日本人女性と同じ名前の女性が、「ノルウェイの森」に登場しているのだ。

 また、「ノルウェイの森」は37歳の「僕」が乗っているボーイング747がハンブルク空港に着陸し、飛行機の天井のスピーカーから、ビートルズの「ノルウェイの森」が聞こえてくる場面から始まる。そこで「僕」はこのようにグチをこぼす。「やれやれ、またドイツか」──。

「また」と言いながらも結局、「僕」がドイツやハンブルクを訪れてきた理由は最後まで明かされない。ファンたちは長年、ハンブルクはビートルズの活動拠点だったからという説を有力視しているが定かではない。

「もし、この設定にあの時のドイツ滞在が影響を与えたなら、村上春樹ファンや研究者のためにもその事実を明かしておきたい」(シュナイダー氏)

 村上春樹事務所に事実を確認すると、事務所から連絡を受けたという編集者の都築響一氏が村上氏に代わって以下のように答えた。

「該当記事は、僕が責任編集したもので、村上さんと一緒に取材旅行に行っていました。そのカメラマンには覚えがありません。取材旅行中、僕は常に村上さんと一緒に行動していたので、こちらの知らない場所で大麻、というのは、写真も含めてありえないかと思います」

 シュナイダー氏の写真に「常にいた」都築氏の姿は発見できなかった。いみじくも「1Q84」と同じ年の村上氏を、永江氏はこのように分析している。

「ちょうど初の長編作品『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の発売前年です。あとづけで考えると、一つの壁に当たっている時期と言えます。『ノルウェイの森』を書くか書かないかで、すさまじい葛藤の中にいた過渡期だったのでしょう」

 このような葛藤の中で、あの夜、“紫の煙”に包まれた村上氏は何を感じたのだろうか。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
【戦慄秘話】「山一抗争」をめぐる記事で梅宮辰夫が激怒説教「こんなの、殺されちゃうよ!」
2
神宮球場「価格変動制チケット」が試合中に500円で叩き売り!1万2000円で事前購入した人の心中は…
3
巨人で埋もれる「3軍落ち」浅野翔吾と阿部監督と合わない秋広優人の先行き
4
永野芽郁の二股不倫スキャンダルが「キャスター」に及ぼす「大幅書き換え」の緊急対策
5
「島田紳助の登場」が確定的に!7月開始「ダウンタウンチャンネル」の中身