社会

日本全国クマ襲撃!アーバンベアによる「小学生を狙った食害」が多発する/人肉は蜜の味(下)

 本州以南に棲息しているツキノワグマは、北海道の獰猛なヒグマと同様、シカなどの野生動物を襲って食べている。人間も例外ではなく、人肉の味を知ったツキノワグマは、人間を獲物として襲い始める。人食い熊にとって、人肉は蜜の味なのだ――。

 全国各地でクマによる人的被害が続出する中、前回の記事ではツキノワグマをめぐる常識のウソに迫った。そこで大いに気になるのが近年、とりわけ今年に入って目撃情報や人的被害が急増している「アーバンベア」の存在である。

 アーバンベアは、人里に比較的近い山林などを根城として、市街地への出没を繰り返すクマの総称だ。もとより人間を獲物として襲うヒグマに加えて、アーバンベアのツキノワグマが人肉の味を覚えて次々と人間を襲うようになれば、それこそ一大事である。

 その切迫度について、クマの生態に詳しい動物学者は、次のように警鐘を鳴らした。

「今のところ、アーバンベアのツキノワグマによる市街地での対人食害は、報告されていません。しかし、市街地での人的被害が史上最悪の頻度で発生している現況を考えれば、アーバンベアの一部の個体が人食い熊に変貌するのも時間の問題でしょう」

 具体的には、アーバンベアのツキノワグマに襲われて命を落とした被害者の遺体の一部が、根城としている巣穴などに持ち去られる、といった事態が想定されるという。中でも強く懸念されるのが「子供を狙った食害」だというのだ。動物学者が続ける。

「ツキノワグマは子供のシカをよく襲う。子ジカは体が小さく、そのまま口にくわえて巣穴に持ち帰ることができるからです。ツキノワグマには、持ち帰った獲物を巣穴の近くに埋めて隠すという習性もある。腐肉も消化できる能力が備わっているからです。このような習性や能力を考え併せると、アーバンベアが体の小さい人間の子供を獲物として持ち去る可能性は、十分に考えられるのです。出没地域での小学生の朝夕の登下校などには、最大限の警戒が必要でしょう」

 そして古来、山の民の間で「神隠し」などと呼ばれてきた子供の蒸発事案にも、クマによる持ち去りと食害が少なからず含まれていたはずだ、とも指摘するのだ。

 従来の枠組みを超えた抜本的なクマ対策が、早急に求められるゆえんである。(おわり)

(石森巌)

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