社会

「Mrs.GREEN APPLE」だけじゃない…過労と睡眠不足が引き起こす「突発性難聴」回復の絶対条件

 2023年の日本レコード大賞を受賞した人気ロックバンド「Mrs.GREEN APPLE」のギター&ボーカル・大森元貴が、左耳の突発性難聴と診断された。公式サイトで明らかにされたところによると、

〈メンバーの大森元貴につきまして昨日1月19日、左耳が聞こえづらい症状があらわれ、本日病院で医師の診察を受けた結果、突発性難聴と診断されました〉

 突発性難聴とは突然、片方の耳から音が聞こえづらくなる等の症状が現れる、原因不明の難聴だ。1990年代は患者数が年間1万人から2万人だったのが、2000年代以降は年間3万人から7万人に急増している「原因不明の現代病」のひとつだ。働き盛りの40代から60代に多くみられ、突発性難聴を起こす前に睡眠不足や過労、ストレスなどの自覚症状があったり、糖尿病で治療中の人が発症する。

 睡眠不足や過労、何かしらの感染が影響して耳の奥、内耳の部分にある、音を感じ取って脳に伝える役割の有毛細胞と周辺の毛細血管が傷つくのが原因とみられている。患者の3分の1は完治もしくは聴力が戻るが、3分の1は聴力が戻らない。なかなか厄介な、難治性の難聴だ。

「Mrs.GREEN APPLE」の多忙ぶりは、誰もが認めるところだろう。昨年12月30日にレコード大賞を受賞したほか、紅白歌合戦や民放の年末音楽特番に出ずっぱりだった。

 さらに12月20日から今年3月までは、全国ツアーの真っただ中。バンド結成から苦節10年目にレコード大賞を受賞して、勢いに乗っているツアー中の「アクシデント」となってしまった。

 心配されるのは大森の左耳の聴力が回復するかどうかだが、突発性難聴は発症から2週間以内の早期診断、早期治療が重要。患部の血流をいち早く改善させ、有毛細胞を早く回復させられるかどうかが聴力改善のカギとなる。

 大森の場合、聞こえづらくなくなった翌日に診察、治療を再開しており、まだ20代なので、聴力回復の望みはあるだろう。過去に突発性難聴の闘病を発表した「KinKi Kids」の堂本剛や浜崎あゆみも、音楽活動を続けている。

 睡眠時間6時間以下が続き、過労やストレスを自覚している人が、もし起床時や出勤時に耳が聞こえづらいと感じたら、昼間のうちに耳鼻咽喉科を受診してほしい。早期診断が重要といっても時間外診療や救急外来に駆け込んだり、救急車を呼んでゴネても意味はない。夜間や休日に精密検査は受けられないからだ。

 そして、1月21日のXでトレンド入りした「#もっくん」を大森でなく本木雅弘と勘違いした世代はもう若くないことを潔く認めて、寒さが最も厳しいこの季節、十分な栄養と休息、睡眠をとって自分の体をいたわろう。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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