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「やっぱり映画っていいなあ」 ーさよなら歌舞伎町ー

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──さよなら歌舞伎町──

●ストーリー 周囲には一流ホテルマンと偽るラブホテル店長の徹は、ミュージシャン志望の沙耶と同棲中だが、少々倦怠期。そんな彼の職場に訳アリの男女が集まる。 ●監督/廣木隆一 出演/染谷将太、前田敦子ほか ●配給会社 東京テアトル ●テアトル新宿ほかで全国公開中。

“世界最大級の歓楽街”の異名を取った新宿・歌舞伎町も、すっかり“浄化”された。映画館も次々閉館し最近は足を運ばなくなった読者諸兄も多かろう。

 実はボクもそのクチ。若い頃はよく通った。「ジェスパ」なんて飲み屋も懐かしいねえ。当時のディスコ、映画の深夜興行や雀荘で年越ししたこともあった。もちろんお色気方面も「ハワイ」「ロンドン」など花のキャバレーに足しげく、金髪クラブにも繰り出した。あの頃は若かった!

 すでに同所に往時の妖しい輝きはない。そんな黄昏気分に「さよなら歌舞伎町」という題名が似合う。この街のラブホを舞台に、年齢も職業も違う“訳アリ男女”が交錯する人間群像の物語である。

 目玉は、ミュージシャン志望のヒロイン役に元AKB48の前田敦子。相手役で歌舞伎町ラブホの店長に扮するのが染谷将太。弱冠22歳の若手演技派だ。

 冒頭から2人の同棲シーンとなる。前田は「ねえ、しよ。して」と甘い声ですり寄るが、近頃プチ倦怠期なのか、彼のほうは気乗り薄。突然、冗談っぽく彼女を抱きかかえ、着衣のまま前後に体を動かして、まね事をするだけでオシマイ。アイドル脱皮、女優宣言した前田だけに「初の本格濡れ場挑戦」か、と早合点無用である。この程度のマイルド描写です。

 後半にも、いわゆる“枕営業”シーンがある。レコード会社幹部らしき社員とラブホで会うのだが、当然、代償はカラダ。「別にいいんだよ。女に不自由してないし」と完全に上から目線の相手に、前田は躊躇しつつも覚悟を決めて下着姿に‥‥。ただ、すぐ事後シーンとなり、全裸をシーツに包んで、哀愁顔を見せるのみ。

 そんな前田のエッチなシーンは薄味だが、共演女優はかなり濃い。デリヘル嬢役の韓国美人女優イ・ウンウが、豊満なバストをあらわにリアルに演じている。ラブホ不倫中の熟美女役の河井青葉は、昨春に公開された「私の男」でも浅野忠信とのカラミに続いて、今度も濡れ場に挑んでいる。「R-15」指定は、彼女たちの頑張りによるものだろう。

 監督は「ヴァイブレータ」の廣木隆一、脚本は「共喰い」の荒井晴彦という性描写には定評のあるベテランたち。

 エピソード的にいちばん愛着が湧いたのが、ラブホの清掃人の中年女性(南果歩)と情人(松重豊)。実は時効寸前の指名手配カップルで、息を潜めるように生活し続け“あと1日”を逃げ切れるのか否か。気がついたら彼らをひそかに応援していた。歓楽街に棲息する、決してほめられない、でも憎めない男女にエールを!

 読者諸兄それぞれの“歌舞伎町個人史”を回想しながら鑑賞するといいね。

◆次回は前田有一氏です

◆プロフィール 秋本鉄次(あきもと・てつじ) 1952年生まれ、山口県出身。映画評論家。「キネマ旬報」などで映画コラムを連載中。著書に「やっぱり!映画は“女優”で見る!」(近代映画社刊)など。

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