森保ジャパンがチームの底上げ、新戦力発掘に失敗した。
2026年北中米W杯アジア最終予選。本大会出場を決めている日本代表は、アウェーでオーストラリア代表に敗戦した。
日本は3月のサウジアラビア戦から先発を10人入れ替え、しかも初先発が9人という、今までとは全く違うメンバーで臨んだ。
戦前の予想では、2位で本大会出場を決めたいオーストラリアが攻撃的に攻めてきて、日本を押し込むとみられていた。ところが試合が始まると、オーストラリアはブロックを作って守りを固める。失点をせず少ないチャンスをモノにして、勝ち点3。最悪でも引き分けで勝ち点1と考えていたのかもしれない。
試合開始早々から日本がボールを保持し、完全に押し込んでいた。それでもなかなか崩せず、前半を0-0で折り返す。後半に入っても日本が主導権を握り、69分には久保建英(レアル・ソシエダ)、中村敬斗(スタッド・ランス)の主力組を投入し、勝負に出た。すると80分、久保が相手のクリアボールを拾い切り返して中央からシュートするが、わずかに右にそれた。
その後も日本が一方的にボールを保持。そしてこのまま終わると思われた、終了間際の90分。オーストラリアにワンチャンスを決められ、万事休すとなった。
日本のボール保持率は約70%。ほとんどの時間をオーストラリア陣で試合を進めながら、試合終了間際の失点。屈辱的であり、本大会出場を決めていなければ、監督更迭に発展してもおかしくない敗戦だった。もちろん大会出場を決めているから、先発を大幅に入れ替えたのだが。
ただ、試合を分析すれば、日本のシュート数は13本で、枠内に飛んだのはわずか1本。一方的に試合を優位に進めえたとはいえ、オーストラリアのGKマシュー・ライアンがファインセーブをしたシーンはない。結局、決定的なチャンスを作れなかったということだ。
相手に守られたら崩せない、攻め切れない。それはカタールW杯でコスタリカに負けた時と同じで、何も変わっていない。
この予選の結果を見て「史上最強」とか「アジアNo.1」と言われているが、オーストラリアには1敗1分と負け越している。もう一度、自分たちの足下を見つめ直す、いいきっかけになったに違いない。
チームの底上げ、新戦力の発掘と言われた試合だが、日本代表で最もいいパフォーマンスを見せたのは、鎌田大地(クリスタル・パレス)。次いで途中出場の久保だった。9人が初先発で、しかも実際にトレーニングができたのは3日間だけ。急造チームでは限界がある。選手を試すのであれば、主力組と一緒にプレーさせた方がいいのではないか。
そんな中で、ある程度アピールができたのは、平河悠(ブリストル・シティ)ぐらいか。90分間、衰えを知らないハードワーク。ボールを前に運ぶ推進力。そして得意のドルブルからのシュートと、持ち味を発揮した。それでも同じポジションの堂安律(フライブルク)、伊東純也(スタッド・ランス)を脅かすほどではなかった。ただ、主力組と一緒に試合に出たらどんなプレーをするのか。そういう期待感はあった。
W杯本大会まで1年。選手を試す試合は限られている。代表入りを目指す選手にとって、ムダにできる試合はひとつもない。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。