「名門インテルに大健闘」…そんな言葉は何のなぐさめにもならない。
サッカーのクラブW杯は1次リーグの第2戦が行われ、浦和レッズはイタリアの名門インテルに逆転負けを喫した。浦和はこれで2連敗となり、1次リーグ敗退が決まった。
初戦のリーベル・プレート戦とは違い、試合の入りは良かった。前半11分には、右サイドを突破した金子拓郎のクロスを中央で渡辺凌磨が合わせ、先制する。その後は防戦一方になるものの、なんとか前半を1-0で折り返す。
後半に入ってもインテルの猛攻は続き、自陣に引いて守ろうとする浦和だが、耐える時間が長く、徐々にボディブローのように効いてくる。
すると78分、コーナーキックからアルゼンチン代表のラウタロ・マルティネスに同点ゴール決められた。そして試合終了間際のアディショナルタイム、バレンティン・カルボーニに劇的な逆転ゴールを決められ、敗退となった。
試合前日の会見で、浦和のマチェイ・スコルジャ監督は「サプライズを起こせる」と言っていたようだが、サプライズを起こしたのはインテルだった。
ただ、浦和にアドバンテージがあったのは事実だ。インテルは主力6人が故障欠場。さらに、シーズン終了後から準備ができずにトップコンディションではなく、監督が代わったばかり。しかも浦和は初戦も2戦目もシアトルで試合ができ、移動がなかった。一方のインテルはロサンゼルスから約3時間のフライトを含め、シアトルまで移動してきた。中3日の試合で、浦和にはこれだけのアドバンテージがあったのに…。
1-2といえば僅差だが、シュート数は浦和5本に対し、インテルは26本。ボール支配率も浦和22%、インテル78%と、点差以上にレベル、力の差があったことを数字が表している。
先週、このコラムで浦和の決勝トーナメント進出の可能性を、初戦のリーベル・プレート相手に勝ち点を奪うことを条件とした。その理由は、国の代表によるW杯、参加国が32カ国になってからのデータとして、初戦に負けた国が決勝トーナメントに進出する確率が約10%しかないことにある。つまり初戦に負けた段階で、浦和の決勝トーナメント進出はかなり厳しい状況になっていたのだ。
グループEは浦和以外の3チームに決勝トーナメント進出の可能性が残っている。つまりこのグループは、浦和が草刈り場になっているということ。浦和戦で勝ち点を落としたチームが脱落する。そんな展開になっているだけではなく、1勝2分で3チームが並ぶ可能性さえある。
そもそも浦和はクラブW杯に向けての補強や準備は万全だったのか。毎年のように「大型補強」と言われてきたが、それはJリーグで勝つためのドメスティックな補強であり、そのJリーグでも優勝できないのが現実である。クラブW杯に向けて、大物選手を獲得することはなかった。
4年後もこの世界の舞台に立ち、勝ち上がりたいのであれば、普段から「世界」を意識したチーム作り、補強をしていかなければ無理だろう。今のフロントに、その覚悟があるかどうか。今のままでは、ACLE(アジア・チャンピオンズ・リーグ・エリート)で優勝するのも難しい。100億円クラブの意地を見せてほしい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。