6月22日の「サンデーモーニング」(TBS系)のスポーツコーナーで取り上げられたのは、前日のDeNA×ロッテ戦だった。DeNAは2回裏にロッテのプロ入り初先発初登板、ドラフト5位ルーキー・廣池康志郎を攻略。牧秀悟、筒香嘉智、戸柱恭孝の三者連続ホームランが飛び出し、試合を有利に進めた。
「3連発とか三者連続というと、槇原さんの辛い過去が甦ってくる」
ここで駒田健吾アナは、野球解説者の槙原寛己氏に話を振った。すると槙原氏は苦笑い。
「だいぶ前にキャスティングされてるんで、三連発が出たから呼ばれたわけじゃないです」
手痛いプロの洗礼を受けた廣池について、
「そこを糧にして、まだルーキーなんで。僕も若い頃にやられて、頑張りましたんで」
自らプロ4年目の1985年4月17日の「あの一件」を引き合いに出したのである。甲子園球場での阪神戦でバース、掛布雅之、岡田彰布に食らった「伝説のバックスクリーン三連発」だ。
「今では笑ってしゃべれますけどね、その時は辛かったですよ」
若手時代にそんな苦い経験をした槙原氏だが、やがて栄光の瞬間が訪れる。1994年5月18日、福岡ドームで行われた広島戦で、打者27人に対し一人のランナーも許さない完全試合を達成したのだ。槙原氏以前となると、1978年の阪急・今井雄太郎で、以後では2022年のロッテ・佐々木朗希の例があるだけ。槙原氏の完全試合は、平成で唯一の大記録だった。
あわや令和二度目の完全試合か、というピッチングを見せたのは、日本ハムの北山亘基だ。6月19日の巨人戦で、7回二死までパーフェクトに抑えていたが、泉口友汰を四球で出塁させ、大記録を逃してしまう。この場面について槙原氏は、
「凄いストレートで押してて、これやるなって感じだったんですよ。でも7回から球場が沸き出したんです。僕も経験してるんですけど、すごい意識するんですよ、お客さんもわかってんなって感じ。で、ちょっと力入り出したんで…」
そして四球を出した瞬間のことを、
「その時、内心、僕もちょっと嬉しい」
自身の記録に並ばれなかった気持ちを正直にぶっちゃけて笑いをとると、
「難しいんだぞ、ってことがね。そんな簡単にできないですよ、意識しちゃうと」
大記録を達成するかどうかという場面での、心理的な難しさを説いたのだった。
北山はその後、9回裏一死から大城卓三に本塁打を浴び、ノーヒットノーランも完封も逃してしまったが、今季3回目の完投勝利。首位を走る日本ハムの先発ローテの軸として活躍を続けている。大記録への「再挑戦」に期待したい。
(石見剣)