最近、メディアへの露出を増やしている岸田文雄前首相。「再登板に意欲」との報道も出ているが、実は墓穴を掘っている。というのも、岸田政権下の2024年8月頃からコメ価格が高騰したのに対し、岸田政権の対応が後手に回った、との指摘が出ているからだ。
岸田氏は6月8日、フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」に出演した際、番組ではコメ価格が岸田政権時に1.8倍になり、石破政権に代わって1.3倍になったとされた。農林水産省によると、全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は、2024年6月頃までは5キロあたり2000円から2200円で推移していたが、8月には2600円を超えた。さらに価格は上がり続け、9月には3000円を超え、10月には3400円に。
ここでフジテレビの松山俊行解説委員が質問した。
「当時の坂本(哲志)農水相は備蓄米の放出をしなかった、との決断に誤りはなかったと、退任挨拶で言っていた。9月になったら新米が入ってくるからということだったが、それが誤りだったのではないかとの指摘が、小泉進次郎農水相からも出ている。このあたりはどう受け止めているか」
岸田氏の答えはこうだ。
「新米の動向等も踏まえた上での判断だった。ただ、その後も価格がどんどん変動している。もう社会問題と言っていいような大きな議論になっているわけなので、その間の経緯を今一度、しっかりと検証していくことが大事だ」
岸田氏は言及しなかったが、昨年8月、岸田氏がカザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルの3カ国を訪問する予定だったのを急遽、とりやめたことがひとつの要因になっている、との声がある。南海トラフ地震の臨時情報「巨大地震注意」を受け、国内対応を優先するとの言い分だった。その結果、巨大地震に対する警戒からコメが店頭からなくなり、価格は上昇した。結局、南海トラフ地震は起きなかった。
そもそも岸田氏の訪問とりやめには唐突感があった。退陣を決めていたので行く気をなくし、南海トラフ地震情報を口実にした、との批判が自民党内にはあった。
岸田氏は再登板に意欲を示す前に、自身の行動をもう一度、検証したほうがいい。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)