鹿児島県のトカラ列島で群発地震が続ている。十島村をはじめとする島の住民らは「大地震が起こるのではないか」と不安を募らせるが、気象庁は「プレート境界で発生する大地震との関連性はない」との見解を示している。
実は多くの専門家の間で今、ある大地震の発生が、大いなる切迫度をもって秘かに懸念されている。群発地震騒動の陰で囁かれているその大地震とはズバリ、北海道の「根室沖」を震源とするM(マグニチュード)8クラスの「千島海溝巨大地震」だ。
それがいかに差し迫った危機であるかは、政府の地震調査委員会が公表した最新の発生確率(今後30年間における発生確率)からも明らかだ。
千島海溝沿いのプレート境界で発生が予測されている大地震は、主として2つ。いずれもM8クラスの巨大地震だが、このうち「十勝沖」を震源とする海溝型巨大地震の発生確率が「20%程度」であるのに対し、「根室沖」を震源とする海溝型巨大地震の発生確率は、実に「80%程度」にも上っているのだ。
麻雀で言えば、まさに「テンパイ状態」だが、予想されている被害もまた、甚大だ。地震防災の専門家は、次のように警告している。
「根室沖か十勝沖で海溝型の巨大地震が発生した場合、北海道の東側沿岸地域は『最大震度7』の揺れ、東北の東側沿岸地域は『最大震度6強』の揺れに襲われるとされています。さらに恐ろしいのが津波の発生で、北海道と東北の東側沿岸には『20メートルを優に超える大津波』が何度も押し寄せると予測されているのです」
それだけではない。その時、東日本大震災で前代未聞の被害を受けた福島原発を、再び大津波が襲う危険性が指摘されているのだ。地震防災の専門家が続ける。
「廃炉作業中の福島原発では防潮堤の設置、建屋開口部の閉鎖、建屋滞留水の流出防止などの対策が講じられてきました。しかし、これらの対策で原発の安全性が完全に確保されるとは限らず、再び想定外の事態が発生することは、十分にありえるのです」
南海トラフ巨大地震の発生も含めて、不断の備えが求められる。
(石森巌)