観光公害問題とセットで、外国人観光客の訪日熱は高まっており、このゴールデンウイークも、全国の観光地は外国人で溢れた。
例えば香港からの昨年の訪日客数は268万人超と、過去最多を記録。この数字は香港の人口のおよそ3分の1に相当しており、香港人にとって、日本は最も人気のある旅行先なのだ。
ところが、そんな活況を根底から覆す事態が発生した。
今年2月頃から香港人の訪日客数が、突如として急減。香港と日本を結ぶ徳島便、福岡便、仙台便、札幌便などの定期航空便が、相次いで減便に追い込まれる異常事態に陥っているのだ。
原因とされているのは、香港の著名な風水師による、次のような言葉だった。
「今年6月から8月にかけて、日本で大地震が起こる」
この「衝撃の予言」を受けて、香港の都市伝説インフルエンサーらもYouTube動画で「大津波に襲われる」「大隕石が落ちる」「火山が大爆発する」などと指摘。これらがSNS上で拡散されたことから、一連の異常事態に立ち至ったのである。
実は今回の風評騒動のバックボーンには、中国語版も発行されている日本の人気予言マンガ「私が見た未来 完全版」の存在がある。
作者のたつき諒氏は、2011年の東日本大震災の発生を予言した人物として知られ、上記の作品でも「本当の大災難は2025年7月にやってくる」などと警告していた。これに風水師の予言が拍車をかける形で、不安が一気に拡大していったようだ。
さらに言えば、内閣府の中央防災会議が南海トラフ巨大地震の新たな被害想定を公表したことで、在日中国大使館が今年4月、在留中国人に対して防災対策を呼びかけたことも、憶測に火をつけたと言われている。
言うまでもなく、大地震をはじめとする天災への不断の備えは重要である。しかし地震予知はその発生時期を含め、現時点の科学的知見では不可能とされており、いわゆる予言の類に十分な科学的根拠は存在しないことも忘れてはならない。
はたして6月から8月の日本列島はどうなっているのか。予言の警告時期が過ぎ去る今秋には、騒動は収束するのか。旅行業や観光業に携わる関係者は、固唾を飲んで事態の行方を見守っている。
(石森巌)