フジテレビが打ち出した「今後の再生・改革の具体策」を、みなさんはどう感じただろうか。
同局が40年以上も掲げてきたスローガン「楽しくなければテレビじゃない」からの脱却、「人権ファースト」の徹底などの方向性を明らかにしたのだ。会見を行った清水賢治社長は、こう語っている。
「面白いことをやるために他のものを犠牲にしてもいい、というのは曲解された考え方。誰かの犠牲の上に成り立つものではない」
改革案の中でとりわけ目がいくのが、局の要である編成局とバラエティー制作局の解体・再編だ。番組にキャスティングされるアナウンサーの「従属的立場」が中居正広氏による性加害問題などを生んだとの認識から、アナウンス室を編成局から独立させ、間に入る「コーディネーター」が出演調整を担う制度を作るという。
中居氏と、その性暴力の加害者となった元女性アナウンサーの間を取りもったのは、元編成局幹部のB氏(第三者委員会の報告書の呼称)。B氏はその職権を濫用して、女性アナウンサーを飲み会に連れ回していた。編成幹部のみならず、港浩一前社長ら同局の歴代幹部も、女性アナウンサーをホステスのように扱うような企業風土だった。
清水社長は5月をメドに、B氏への処分を下すと明かしたが、かなり重いものになると思われる。
そんな体制を打破するべくコーディネーター制を導入するというのだが、そこである疑問が生じる。
「アナウンサー経験のある人材をコーディネーターに据えるでしょうが、そのコーディネーターがアナウンサーのキャスティング権を握ることになる。人間誰しも好き嫌いはあるもので、そのコーディネーターに好かれていないアナウンサーには仕事がなかなか回らず、好かれているアナウンサーには多く仕事が回ってくるような環境が生ずるかもしれない。そうなってしまったら、改革案を打ち出した意味がない」(放送担当記者)
重要なポストになりそうなだけに、慎重な人選が求められる。
(高木光一)