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Posted on 2025年07月27日 18:00

大友康平(HOUND DOG)有無を言わさず「主演映画」が決められてしまった/ミュージシャン直撃!これが俺たちの「俳優バージョン」

2025年07月27日 18:00

 今年メジャーデビューから45周年を迎えたHOUND DOGのボーカル・大友康平(69)の熱きロック魂は不変である。一方で俳優としても、35年ものキャリアを積み上げてきた。畑違いの世界に足を踏み入れたのは、実は本人のあずかり知らないところで決められていたようで‥‥。

 当時の事務所の社長が銀座のクラブで飲んでいて、たまたま東映の社長に声をかけられたんだね。「おたくの大友くんって役者でもいいんじゃないですかね」って。そしたら「どんどん使ってください」と言っちゃって。相当酔っていたんだと思いますけど(笑)。

 それで正月上映の映画が決まるのですが、僕は学芸会すらやったことがない。それが、いきなり主演ですよ。さすがにそれは‥‥と思ったけど、有無を言わさず監督との食事会がセッティングされていて(笑)。

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 ほどなく大友が主演を務めた「ゴールドラッシュ」(90年、東映)の撮影が始まった。当然ながら、現場では戸惑うことばかりだったという。

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 いきなり北海道の炭鉱町に連れて行かれて、何が何だかさっぱりわからない状態だった。北海道ロケの撮影後には3日3晩、スナックで当時のヒット曲「ONLY LOVE」を歌わされたのを覚えてる(笑)。

 今はまったくセリフが入らないですけど、あの頃は記憶力がよかったな。1~2回パッと台本を読んだら入りました。でも実際にカメラが回ったら「大変なところに来ちゃったな」って感じですよ。まったく真逆の世界ですから。音楽は自分でセットリストを作って、その演出をする。いわば自分が主役です。対して芝居は、とにかくいろんな人の話を聞いて、「はい、わかりました」って。まさに「百獣の王ライオン」と「借りてきた猫」ぐらいの違いがある(笑)。歌はリズムに沿って、そのまま進行する。でも芝居ってリズムを一旦断ち切って「間」が入る。裏を返せば、間を作れる分だけセリフを思い出すことがある。歌はどんどん曲が進んでいって、歌詞を思い出せないこともあるからね(笑)。

 驚いたのは、和泉聖治監督の演技指導がうまくてね。目の前で演じて見せてくれるんです。その後も多くの監督と仕事をしていますが、結局、監督がいちばん演技がうまいのだと思いますね。

 大変な思いをして映画は完成したんですが、メディアの評価は何から何までボロクソの酷評でした。だから「冗談じゃねぇ、もう絶対(俳優は)やるもんか」ってなりました。そういえばうちの奥さんも「ロックンローラーの妻になった覚えはあるけど、ヘタな役者の妻になった覚えはない!」って言ってたな(笑)。

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 その後、しばらくは俳優業とは縁がなかった。だが、ある監督の作品が大友の心を翻意させる。

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 金沢でホテルからコンサート会場まで歩いていた時、マネージャーの電話が鳴って、「大友はそういうのはやらないですから」って電話を切っていたんですよ。「何?」って聞いたら、「映画です。NHKの『のど自慢』を舞台にしたコメディみたいです」と言われて、「ちょっと面白そうだな」と思ったんです。興味深い題材で、その映画が上映されたら、たぶん観に行くだろうなって。

 それで「のど自慢」(99年、東宝)の井筒和幸監督に会いました。最初は好々爺で、いい感じのおっちゃんでしたが、現場に行ったら鬼でした(笑)。ケチョンケチョンで「なっとらんな。話にならない」とか怒られて。こっちも頭にきて「俺はミュージシャンだから、関係ねぇんだよ!」みたいなことを言おうと思ったんですけど、現場がおかしくなるからやめました(笑)。 井筒監督のあの作品で悔しい思いがあったからこそ、その後も俳優を続けてみようと思ったんです。

 数年後、井筒監督の「パッチギ!」(05年、シネカノン)に呼ばれた。すでにドラマや映画にも多少は出演していて経験も積んでいたので、「以前とは違うぞ」という気持ちで撮影に臨みました。監督に褒めてはもらえなかったけど、すんなり「はい、OK!」って言われた時は、本当にうれしかったですね。日本で発売中止になった(北朝鮮の楽曲を松山猛が作詞した)「イムジン河」という曲をテーマにして「全世界、この宇宙で歌っちゃいけない歌なんかないんだ」という強いメッセージが込められた作品で、今でもいちばん思い出に残っていますね。

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 井筒監督の現場を経験し、徐々に演じるということへの意識も変わっていったという。

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 まだまだ面白いっていう領域まではいかないですけど、ちょっと興味が湧いてきたなぐらいかな。結局、歌うことも芝居も表現ですからね。

 セリフはひたすら集中して、書いたりしながら覚えています。就寝前にベッドで復習して、つらつら言えたらよしってなるんですが、起きてからもう1回言えるかって、そこですね。でも日常生活で、噛まずに台本の半ページ分ぐらいしゃべっている人なんて見たことがないよね。しかも理路整然と、起承転結があって、「嘘だろ、お前」みたいな(笑)。

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 本職の俳優のすごさをまざまざと見せつけられたこともあった。それは同じミュージシャンの小田和正が監督を務めた映画「緑の街」(98年、ファー・イースト・クラブ)でのことだった。

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 HOUND DOGで日本武道館2DAYSをやっている時に小田さんから「映画を作るから、ちょっとアンコールの時間貸してくれないか」って言われたんです。ビックリしましたよ。ライブのアンコールですからね。でも尊敬する先輩のお願いだったので、うちのファンに頼んで協力してもらいました。

 すごかったのは、主演の渡部篤郎さん。いきなり自分のファンではない1万人の前にバーンとぶち込まれて、飄々と演じるわけですよ。役者ってすげえなって思ったよ。場を提供した経緯もあったので、小田さんから「じゃあ、大友にも役作ってやるから出ろよ」と言われ、「はい、わかりました」で、映画にも参加しました。でも小田監督は厳しくて。あの人、歌のイメージとは違って、野球部主将みたいな人なんです(笑)。

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 俳優として活躍の場を広げる大友康平だが、やはりロックンローラーとしての姿勢は変わることはない。

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 僕はロックンロールっていう太い幹がある中、お芝居とかバラエティーとか、枝葉に首を突っ込んでいけることが、人生として何か楽しいんじゃないかなって思うんですよね。ちょっと脇道にそれると、また本道がよく見えたり、こうあるべきだっていう理想の形が見えたりする。だから後輩にも、やれる機会があったらどんどんやりなさいと言っていますね。

大友康平:1956年生まれ。宮城県塩竈市出身。80年ロックバンド・HOUND DOGでメジャーデビュー。ボーカリストとして「ff(フォルティシモ)」「ONLY LOVE」など数多くのヒット曲で、ロックシーンを牽引。音楽、俳優にとどまらず、バラエティー番組にも多数出演。

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