社会
Posted on 2025年11月15日 18:00

“惨劇シミュレーション”人喰いグマ「東京23区襲来」で高級住宅街が血の海に…

2025年11月15日 18:00

 まさか、東京23区内に野生のクマが出没するなんて絶対にありえない。都心の居住者の多くは、全国各地で相次ぐクマによる被害を対岸の火事と捉えていることだろう。いや、そのまさかが“現実問題”になりつつあるという─。

 10月末に環境省は「今年度、全国でクマに襲撃されて死亡した人数は、過去最多の死亡者数だった23年の2倍、12人に上る」と発表した。

 連日報じられるクマ被害は、まさに非常事態と言っても過言ではない。近年、北海道、東北、北陸地方を中心にして拡大し、その脅威は全国各地に広がりつつある。そして、冗談ではなく首都・東京23区にまで迫りつつあるというのだ─。

 本来は山奥に生息する野生のクマが人間の生活圏に出没し、甚大な被害をもたらすようになったのには理由がある。動物生態学が専門の石川県立大学・大井徹教授が解説する。

「まず1つ目の要因は、1960年頃まで、いわゆる里山では薪、炭などの燃料、畑の緑肥の採取が行われていました。畑や田んぼにもなっているところもあった。しかし、木質燃料の代わりに石油燃料が使われるようになるなど、生活の変化により、里山は自然資源の供給場所ではなくなった。そのため木々が生長し、クマの格好の隠れ場所となって、木の実などのエサも十分に実るようになった。人里にも近いので、銃の使用も控えられて、クマにとっては安心して生活できる環境になったのです。人間の生活圏の周辺に住みつくことで、次第に人に慣れていったクマが増え、出没する状況が整えられていきました。2つ目の要因は、一時的なエサ不足。クマは冬眠する前にたくさんのエサを食べて、エネルギーを蓄えるのですが、今年は北海道、秋田、岩手などで、主食となるブナなどのドングリ類が大凶作となった。山の中にエサがない一方で人里にはカキ、リンゴなど、大きくておいしい実をつけている木や家畜のエサなどがあります。そうしたエサを求めてクマが大挙して出没しているのです。加えて耕作放棄の問題もある。高齢化や後継者不足が進み、畑が荒れ地となって、そこがクマの住処になったり、エサを供給する場所になったりしているのです」

 東京都がインターネット上で公開している「東京都ツキノワグマ目撃等情報マップ〜TOKYOくまっぷ〜」によると、今年に入って青梅市や奥多摩町、日の出町など、西多摩地域において捕獲、目撃などが確認された情報は、すでに241件を超えている。はたして今後、東京23区内にまで野生のクマが侵入してくる事態となるのだろうか。

「クマの運動能力、その生態・習性から考えると、可能性は決してゼロではありません。一般的にクマが出没するのは、生息地である森林からせいぜい100メートルくらいの場所ですが、例えば山の中でエサが不足すれば、河川を移動経路にして、森林から遠く離れた場所に出没するケースもあります。過去にも、クマが河川の上流から下流へと向かい、住宅密集地に侵入した例はいくつもあります」

 こう指摘する先の大井教授は続けて、東京23区内にクマが侵入する具体的な経路についても想定する。

「例えばクマが生息する西多摩地区から多摩川沿いを移動すると、直線距離にして40キロ程度で世田谷区内に到達することができます。河川地帯には整備された緑地のほかに、草木が生い茂っている場所が残っていたり、クマのエサになりうるものが植えてあったり、隠れ場所になるようなヤブもあったりします。以前、クマに発信機をつけて、その生態を観察したことがあるのですが、約10キロを半日で移動したという調査結果もある。西多摩地区に生息するクマが人目につかないように移動することができたならば、1週間程度もあれば、東京23区に侵入することは、決して絵空事ではないのです」

 ご存知の通り、多摩川の下流沿岸には世田谷区瀬田や、大田区田園調布など、日本でも有数の高級住宅街がある。ある日の早朝、静まり返った閑静な住宅街のゴミ置き場の生ゴミを物色する巨大な真っ黒な影が。そこにクマが潜んでいるとはつゆ知らず、散歩中の高齢者が突然、クマに遭遇して、一瞬にしてあたりは「血の海」に─。

 住宅が密集する東京23区内にクマが侵入したら、北海道や東北地方で起きている被害以上に前代未聞の大惨事となるであろう。東京都猟友会の関係者が語る。

「これまで住宅密集地での猟銃の発砲は原則禁止でしたが、全国各地で多発するクマ被害を受けて、今年9月1日より『改正鳥獣保護管理法』(緊急銃猟制度)が施行され、クマが市街地に侵入した際、制度的には市町村の判断で発砲を行うことが可能となりました」

 実際、11月4日にJR秋田駅から約2キロ圏内の市中心部、国道13号線沿いの複合レジャー施設の地下駐車場に体長約1.3メートルのツキノワグマが迷い込み、現場は騒然となったが、緊急銃猟制度により駆除された。

「しかし、もしも東京23区内の住宅街にクマが侵入することになったら、23区内はそもそも狩猟が禁止されていて、狩猟する場所も皆無であるために、地方に比べてハンターの数が圧倒的に少ない。現実的には、西多摩地区や北関東在住のハンターに応援を頼むことになるでしょう。しかも首都であるがゆえに、東京都、区、政府が介入するなど、緊急銃猟制度の判断は、関係各所への稟議・調整が必要になり、即決は難しく、多くの時間を要することになる。また緊急銃猟制度を行うには、外出や交通制限も必要となります。地方都市よりも人口密度が高く、交通量も多い23区で行うとなると、当然、その混乱は大きくなるでしょう」(前出・猟友会関係者)

 人間が駆除の準備、対応に手をこまねいている間にも、返り血を浴びた人喰いグマはエサを求め、その後も傍若無人に住宅街を徘徊し、被害はさらに拡大するかもしれない‥‥。

 もしもクマに遭遇したら、命を守るためにどうすればいいのだろうか。

「大事なのは、クマを刺激して興奮させないことです。石を投げたり、大きな声を出すのはNG。背中を向けて走って逃げないこと。クマの動きを観察しながら、あとずさりしながら、ゆっくりと静かにクマから離れるのです。近くに公民館やコンビニなどの建物があれば、そこに避難する。最近は北海道や秋田の中心部での被害の例に基づいて、クマの進路や逃げ道を絶対に塞がないことが重要とされています。道端で遭遇した場合、クマから完全には姿を隠せないですが、道の端や電柱の裏に避けることで、攻撃されるリスクは少なくなります」(前出・大井教授)

「東京23区にクマが出没」は、大地震を警戒するレベルで心に留めておいてほしい。

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