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Posted on 2025年11月30日 18:00

「プロレスVS格闘技」大戦争〈猪木ら対決推進派を暗殺せよという命令も!?散弾銃、日本刀まで用意されていた大勝負!〉

2025年11月30日 18:00

 今、日本全国でクマ被害が急増して深刻な問題になっているが、かつて“クマ殺し”の異名で格闘技ファンの注目を浴びたのが、極真空手コネチカット支部に所属していたウィリー・ウィリアムスである。

 ウィリーの名前が知れ渡ったのは1976年12月18日公開の映画「地上最強のカラテPART2」。極真空手を題材としたこの映画で、2メートル45センチ、320キロのグリズリーと戦ったウィリーは、アントニオ猪木の異種格闘技戦で火がついた格闘技ブームの中で時の人になった。

「プロレスと極真空手のどちらが強いのか?」と、格闘技ファン、プロレスファンが猪木VSウィリー戦を熱望する中、2人の対決に動いたのは78年初春から少年マガジンで劇画「四角いジャングル」の連載をスタートさせて、劇画と極真空手、新日本プロレス、新格闘術の現実の動きをリンクさせ、格闘技ブームを牽引していた劇画作家の梶原一騎だ。

 猪木がプロ空手のザ・モンスターマンとの再戦にKO勝ちした78年6月7日の福岡スポーツセンターに、映画「格闘技世界一 四角いジャングル」の撮影で訪れた梶原が、新日本プロレスの営業本部長で猪木のマネージャーの新間寿に猪木VSウィリー戦を打診した。

 これは梶原が78年2月に新格闘術・黒崎道場を興した元極真空手師範の黒崎健時とアメリカを視察した際に、極真空手のニューヨーク支部長(コネチカット担当)の大山茂に要請されたもので、大山茂は「格闘技世界一を名乗る猪木を仕留めれば、入門者が増えるはず」と“クマ殺し”として注目されている弟子のウィリーを挑戦させようと考えたのである。

 しかし対決実現までには、実に1年8カ月もの時間を要した。様々な人間の思惑が絡んでいたからだ。

 ウィリーが所属する極真空手は、他流試合を認めてもプロの格闘技の試合は禁じており、大山倍達総裁が「極真はプロではない。空手はまず心の高潔が大事。猪木から金をもらって戦いを見せるなど、もってのほか」と声明を発表。

 梶原と大山総裁は、梶原が劇画「空手バカ一代」で大山総裁と極真空手を世間に広めたことによって義兄弟の関係にあったが、梶原が新間、黒崎と組んで「四角いジャングル」で異種格闘技戦を主役にしたあたりから、徐々に関係が冷めていったという。

 かつて“城西の虎”と呼ばれ、大山総裁の高弟だった現・世界空手道連盟士道館総帥の添野義二は梶原、黒崎とも親交が深かったが、大山総裁に猪木VSウィリー戦を進めようとする梶原、黒崎、猪木、新間の暗殺を命令されたというから穏やかではない。

 その後、裏で丁々発止の攻防戦が繰り広げられた末に、猪木VSウィリー戦は80年2月を目途に開催ということで話が進展した。

 79年11月23~25日に日本武道館で開催される「第1回オープン・トーナメント全世界空手道選手権大会」にウィリーが参加できるように配慮したからだ。

 優勝の大本命だったウィリーは準決勝の三瓶啓二戦で不可解な暴走を見せて反則負けを喫して3位に。この準決勝の主審を務めたのは添野だった。

 極真は80年1月21日にウィリーを破門。「破門した以上、ウィリーは極真の人間ではないので何をやろうが無関係」というのが大山総裁の落としどころだったのだろう。

 80年2月27日、蔵前国技館は殺伐とした空気が充満。プロレスファンと空手ファンのトラブルが懸念されたため、プロレスとしては初めて荷物検査が実施された。舞台裏では、後に猪木とともに寛水流空手を創設する沖縄松林流空手東海支部の水谷征夫館長が、門下生を連れて上京して猪木の護衛にあたり、一方のウィリー側は添野が母校・城西大学の空手部の後輩と添野道場門下生150人を連れて“万が一”に備えて待機。

 第2ラウンド、猪木とウィリーが場外に転落するや、添野軍団がリングサイドに雪崩込み、両者場外カウントアウトの裁定が下って場内は騒然。立会人の梶原が試合続行を命じたものの、第4ラウンドで猪木が場外でウィリーの左腕を十字に取るや、再び黒い集団が雪崩込んで大混乱に。猪木はウィリーの蹴りによる肋骨挫傷、ウィリーは猪木の腕ひしぎ十字固めによる右肘裂創皮下出血のため両者ドクター・ストップということで事なきを得た。

「ウィリーの師匠の大山茂師範に頼まれて、150人を連れて行ったんです。ウィリーは破門されていたとはいえ、私としては“極真の看板と名誉を守る!”という気持ちでした」(添野)

 猪木側の水谷軍団も、ウィリー側の添野軍団も散弾銃を用意し、添野は車のトランクに日本刀まで用意していたというから驚きだ。

「プロ同士の試合は勝ち負けがすっきりしていて遺恨にならないが、アマチュアのほうが複雑な背景を抱えていてドロドロとした結果に終わるもの。ウィリーもドロドロとしたものを背負わされて必死に戦っていたと思う。もしウィリーの腕を折っていたら、それこそ殺し合いになっていたかもしれない」とは後年の猪木の言葉である。

文・小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング」編集長として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)などがある。

写真・山内猛

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