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Posted on 2026年01月18日 18:00

気になる著者に直撃!〈孫崎享〉諜報活動の最前線にありながら日本の危機意識は驚くほど低い

2026年01月18日 18:00

「私とスパイの物語」
ワニブックス・1980円

 MI6、CIA、KGB‥‥。日本で最もスパイと接触・交渉した元駐イラン大使・元外務省国際情報局局長の孫崎享氏が本書でスパイの真実と国際外交の本質に迫る!

 まず、スパイと外交官の違いについて、孫崎氏はこう説明する。

「相手から情報を引き出し、自国に有利になるように働きかける点は共通していますが、決定的な違いは、スパイは違法で非道な手段を使うことにあります。金での買収や女性を使ったハニートラップはもちろん、時には命を奪うこともいとわない。それがスパイなのです」

 外交官時代、ソ連、イラン、イラクなど東西冷戦の最前線や紛争地域に赴任してきただけに、その言葉には説得力がある。

「戦争や冷戦の最前線の現場では、否応なく彼らと接点を持つことになります。海外情勢を分析する外務省の分析課にいたことも、その要因でしょう」

 赴任した地域では、スパイ映画さながらの危機を幾度も体験した。

「例えば、ソ連に赴任すれば、盗聴は当たり前です。日ソ漁業協定の議論が白熱していた70年代後半、日本から専門家を呼んで大使館内を調べたところ、盗聴器が大量に仕込まれていることがわかりました。私たちが不在の間に設置されたのでしょう。また、公使公邸でひと休みしている時、ロシア人女中が出したお茶を飲んだところ、急に体調不良に襲われました。幸い命は取り留めましたけどね。彼女は10年以上、大使館に勤めていたので信用していましたが、当初からスパイとして入り込んでいたのです」

 ソ連社会に潜り込んでいく中、KGBに標的にされるのを避けるために「4つの行動原則」を心がけたという。

「諜報員は『この人間はいける!』と見極めた相手にしか手を出しません。そのため、ターゲットにならない行動原則が重要になります。深酒をしないこと。女性に溺れないこと。情報を欲しがりすぎないこと。過度な体制批判を行わないことを徹底しました」

 多くのスパイと接してきた元外交官にとって、日本の危機管理はどう映っているのか。

「高市政権は『スパイ防止法』の検討に着手しました。戦後政治の中で、外国の情報機関との関係が指摘された人物は少なくありません。そうした状況がありながら『スパイ防止法』はアメリカに利用されている人間は対象外にして、それ以外を取り締まる方向で議論されています。結局、アメリカに追随する国家体制を強化するための法になりかねないでしょう」

 年明け早々、トランプ大統領がベネズエラを攻撃した。激動の時代の中、生き抜く知恵とは─。

「大国間の対立の中で日本は重要なターゲットになっています。諜報活動の観点から見ても最前線にあると言っていいでしょうが、この国の危機意識は驚くほど低い。世界は表だけで動いているわけではありません。裏の世界で動いている部分もあります。外交の公式発表や、きれいな言葉の向こう側に何が潜んでいるのか。想像力を持って国際政治を見てほしいです」

〈原悟平〉

孫崎享(まごさき・うける)1943年、旧満州生まれ。66年、東京大学法学部を中退し、外務省に入省。英国、ソ連、米国、イラク、カナダ駐在を経て、情報調査局分析課長、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。02年から09年まで防衛大学校教授。「日米外交 現場からの証言」で山本七平賞を受賞。「戦後史の正体」など著書多数。

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