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記事全文を読む→気になる著者に直撃!〈小池伸介〉駆除は“後始末”にすぎない!共存には「5つの転換」が必要
「クマは都心に現れるのか?」
扶桑社新書/1100円
昨年度のクマ被害による死者は13人を数え、史上最悪を記録した。なぜこのような事態になったのか?長年、ツキノワグマの生態を研究している小池伸介氏が、被害の全貌と対策を明らかにする。
今年も日本全国でクマの被害が深刻化している。クマが街中に出没を始め、各地で緊急銃猟による駆除が相次いでいるが、小池氏は、こう指摘する。
「駆除はクマ対策に失敗した後片づけにすぎません。クマと共存するためには、従来の考え方を変えなければいけない」
小池氏によると「5つの発想の転換が必要」だとしてこう続ける。
「まずは『認識』の転換です。クマは絵本に出てくるかわいいイメージではなく、いかに効率よく食べるものを得るか、ということを常に追求している非常に賢い野生動物です。私が研究中、ハチミツが入ったドラム缶の罠を仕掛けました。中にクマが入ると上からフタが閉まって出られない仕組みですが、横に倒せばフタは閉まりません。だから毎回、ドラム缶を倒してハチミツを持ち去るクマがいました。ドラム缶を倒すことで簡単にハチミツが取れると学んだのです」
続いて「対策」と「組織」の転換だ。
「駆除よりも予防策が重要です。例えば、クマを引き寄せないために、生ごみや柿などの果樹の屋外放置は禁止。農地の周囲に電気柵を張って、クマにとって魅力のない場所にする『対策』が必要です。また『組織』については、行政に野生動物の専門知識を持つ職員が長期ビジョンを持って、クマ管理の政策を作成します。そして、狩猟免許保有者を公務員として任用した『ガバメントハンター』との連携が、クマ対策でいちばん効果的だと思います」
残る2つは「空間」と「哲学」の転換だ。
「クマが隠れやすい藪を刈るなど、バッファーというクマと人が交わらない『空間』をどのように設定して維持するのか。人とクマの生活エリアを明確に分ける『ゾーニング』対策が急務です。それに、人間とクマは同じ時間帯に同じ場所で一緒にいることはできません。だからこそ住み分けが必要です。最後は『哲学』の転換です。クマと仲よくすることではありません。対抗し続けることこそが共存の本質なのです」
昨今の深刻化するクマ被害について、小池教授は「クマだけの問題ではない」と断言する。
「実は地方が抱える構造的な問題なんです。高齢化が進んで山から来る動物を抑えきれないという、地方の衰退を明らかにしたのがクマ騒動の真相といえます。政府は地方をどうするのか考えないといけません」
まもなく登山のシーズンが本格化するが、もし遭遇してしまった際、命を守るためにどのように行動すればいいのか?
「例えば鈴を持つ、ラジオを持つことによって、こちらの存在をアピールして、クマに先にどいてもらう。それでも遭遇してしまったら、クマ撃退用スプレーは効果的です。スプレーがなければ、うつ伏せになって首の後ろを押さえてください。ただ、クマと出会った時にこれをやれば100%大丈夫という正解はありません。ですから、クマと出会うこと自体が事故と認識して、とにかく出会わないことが大切です」
〈黒川壱郎〉
小池伸介(こいけ・しんすけ)1979年、名古屋市生まれ。東京農工大学大学院農学研究院教授。東京農工大学大学院連合農学研究科修了。博士(農学)。専門は生態学。主な研究対象は、森林生態系における生物間相互作用、ツキノワグマの生物学など。24年よりNGO日本クマネットワークの代表も務める。
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