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記事全文を読む→気になる著者に直撃!〈矢野吉彦〉正史では描かれぬ競馬史の真実。歴史を知れば景色も変わります
「競馬史発掘 正史に書かれなかったあんな話こんな話」
星海社新書/1650円
春のGⅠシリーズで盛り上がる中、ファンが足しげく通う競馬場には、数多くの逸話が存在する。「ウイニング競馬」(テレビ東京系)で長年レース実況を務めるフリーアナウンサーの矢野吉彦氏が、かつての競馬場跡地を訪ね、歴史に埋もれた競馬史を案内する。
「週刊競馬ブック」でもコラムを連載している矢野氏は、正史では語られない競馬史を調査し、そこで発見したエピソードを執筆している。
「競馬の正史というと法律や制度、名馬がテーマになりますが、私はダービー初放送の舞台裏や、戦時下の無観客競馬など、重箱の隅をつつくようなネタを掘り起こしています。そのコラムから極上のネタをまとめたのが本書です」
全国の競馬場跡地を訪ねるだけでなく、さまざまな資料や文献をあたり、今でも歴史をひもとく作業を続けている。
「鉄道好きなので移動も苦ではありませんし、現場は競馬場の跡地ですから、馬券で損をすることもありません(笑)。それに、国会図書館でマイクロフィルムを回して古い新聞記事を見ていると、次々におもしろい話を発掘できて本当に楽しいんですよ」
その“発掘作業”の中で行き当たったのが「東京競馬場は、なぜ左回りなのか?」という疑問だ。
「東京競馬場の前身・目黒競馬場は右回りでした。それが、1933年の府中移設とともに左回りになった。過去、この謎を調べた『東京競馬場50年史』では、資料が見当たらないとして『ゴールまでの上り坂を利用したかったのでは』などと推測していました。しかしあの坂は、左回りと決まってから盛り土で造成されたので、それは理由にはなりません。私もいくつか仮説を立てましたが、確かな資料が見つからないかぎり『諸説あり』としておくしかない。競馬の予想と同じようなもので、仮説を立てることさえもおもしろいんです」
東京競馬場の周辺以外にも、幕末に開設され、日本の近代競馬の発祥地として知られる横浜市の根岸や、石川県の羽咋競馬場、山口県の宇部競馬場、高知競馬場などの跡地を訪れる。
「高知県の星ヶ窪では、西日本一と言われた草競馬が行われていました。高知は古くから馬との縁が深いところだったんですよ」
そんな矢野氏は最近の競馬に少々もの足りなさを感じているという。
「シンザンが史上初の五冠馬に輝いた1965年の有馬記念で、ミハルカスの鞍上・加賀武見騎手が取った“打倒シンザン”の作戦はすごかった。また、1977年の有馬記念で、テンポイントとトウショウボーイがスタート直後からゴールするまで競り合った激闘はテレビで見てシビれました。生意気で勝手な言い方ですが、今はスマートで優等生的なレースが増えたように感じます」
競馬の魅力を知り尽くした矢野氏は、最後にこう呼びかける。
「本書で競馬の歴史を知っても馬券は当たりません(笑)。それでも歴史を知れば競馬の景色も変わって見えると思います。競馬の楽しみ方はさまざまなので、自分の楽しみ方を見つけて、競馬と長くつきあってほしいです」
〈黒川壱郎〉
矢野吉彦(やの・よしひこ)フリーアナウンサー。1960年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。83年に文化放送に入社、主にスポーツ番組を担当。89年1月からフリー。テレビ東京系の「ウイニング競馬」でのレース実況は90年から続けている。近年はライターとしても活動し「競馬と鉄道―あの〝競馬場駅”は、こうしてできた―」では2018年度JRA賞馬事文化賞を受賞。
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