社会
Posted on 2026年10月24日 09:45

モンゴル自然保護区の8割を焼き尽くした「KDDIグループ企業」への「立ち入り理由疑惑」と謝罪では済まない「賠償問題」

2026年10月24日 09:45

「東京ドーム2個分かと思ったら、東京都2個分はさすがに取り返しがつかない」
 モンゴルの草原火災を伝えるニュース動画のコメント欄に、こんな書き込みがあった。見慣れた東京ドームのたとえかと思えば、東京都が2つ以上入る面積が焼失したというのだ。しかも火が出たのは約2週間前で、同じ欄には「今日までびっくりするくらい情報が入ってこなかったの怖すぎる」という投稿が並んでいる。
 
 現場はモンゴル東部、中国国境に近いヌムルグ自然保護区だ。火は10月8日に出て、16日朝まで燃えた。現地報道が伝えた環境・気候変動省の暫定集計では、影響範囲は約52万8766ヘクタール、東京都の約2.4倍にあたる。このうち保護区内は約46万8966ヘクタールで、保護区全体の79.8%が被害を受けた。
 火が国境に迫った中国側は、延焼を防ぐため3400人余りを国境沿いに展開し、消火と防火線の構築にあたった。出火地点は保護区の中でも立ち入りが厳しく制限された中核区域だった。

 火元とされるのが、KDDIが98.8%を出資するグループ会社、モンゴル通信最大手モビコムの車列だ。越智康博CEOら幹部が保護区に入っており、車両から出火したとされる。マフラーなどに絡まった枯れ草に火がついたと報じられているが、詳しい原因は当局が調べている。

 問題はそれだけではない。モンゴルの森林法では9月20日から11月10日を秋の火災危険期間と定めており、中核区域への車両立ち入りはとりわけ厳しく制限される時期だ。KDDIは訪問目的を4Gネットワークの通信試験と説明するが、現地メディアは絶滅危惧種「アムールイトウ」の釣りが計画されていたと報じ、目的への疑いが広がった。

 この自然保護区には希少な動物のほか、固有の植物が生息しており、「もう復活できないだろう」との指摘と落胆の声が、モンゴルの科学者から出ている。

ノムトイバヤル副首相は「許されない」と憤激

 火災の責任を問う声は、鎮火を待たずに上がった。モンゴル国境警備当局が一行の立ち入りを許可していたことが明らかになると、モビコムだけでなく、許可した側への批判も広がった。
 最初の声明に謝罪がなかったことが火に油を注ぎ、越智CEOは10月14日、モビコム本社で謝罪動画を公開した。調査結果に基づき賠償に応じる姿勢を示したが、ノムトイバヤル副首相は同じ14日、謝罪だけでは許されないと述べている。

 KDDIが火災の報告を受けたのは10月11日、謝罪動画が公開されたのは14日だった。日本の主要メディアが動いたのは20日夜以降で、共同通信の記事は中国国営の新華社の報道を情報源としていた。そのため、「KDDIが公式発表しなかったので、各社が二の足を踏んでいた」との見解が広がっている。

 モビコムはモンゴルの携帯電話市場でシェア首位、政府機関の法人回線をほぼ握り、現地最大の広告主のひとつである。現地メディアが報じた際、謝罪を求める追及より、企業側の説明を優先する姿勢があったとして批判された。
 日本でもKDDIはテレビ局や新聞社にとって、最大級の広告主だ。利害関係のない中国の新華社が動いて初めて報道が広がったのは、偶然とは言い切れない。

(ケン高田)

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