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記事全文を読む→【オモシロ舞台裏】台湾の激戦「台北市長選挙」の流れを劇的に変えたのは「月餅問題」だったというすごい話
11月に行われる米中間選挙(3日)や台湾の統一地方選挙(28日)は、今後の国際情勢や地域の政治地図を占う重要な節目となる。両選挙とも接戦となっているが、激戦とされるのが台湾の台北市長選だ。中国国民党の現職が構える牙城に対し、民主進歩党の新人候補が猛追し、一部の世論調査では逆転する事態まで生じている。
この潮流の変化をもたらした要因として、台湾政治の専門家である台湾・清華大栄誉講座教授の小笠原欣幸氏が産経新聞のインタビューで指摘したことが、台湾政界を大いにざわつかせている。政局の潮目を大きく変えた引き金はなんと、中華圏の伝統菓子「月餅」をめぐる騒動にあったのだ。
月餅は丸い形状をした焼き菓子で、9月の中秋節には親しい知人や関係各所へ感謝を込めて贈り合う、重要な社交の道具である。日本でいえばお中元やお歳暮をさらに凝縮した年中行事であり、庶民の生活や企業の贈答文化と分かち難く結びついている。
小笠原氏によると、地方選全体を通じて民進党への追い風と国民党への逆風が鮮明になりつつあるという。その直接の契機となったのが、議会で多数を握る国民党が仕掛けた、強引な予算削減策だった。
国民党は民進党の頼清徳政権への政治的な打撃を狙い、多数派の力を使って日本の官房機密費に相当する総統府の特別費の全額削減を強行した。だがこの予算削減が、思わぬ波紋を広げることになる。
総統府が毎秋、福祉施設や各団体へ配ってきた月餅の購入費までもが削られた結果、受注を見込んでいた福祉作業所や菓子業者は突然の梯子外しに遭い、苦境に陥った。その結果、有権者の間には国民党の横暴に対する強い反感が一気に広がったのである。
日本でいえば老中・松平定信の「寛政の改革」の失敗
これまで続いてきた泥沼の与野党対立の中で、複雑な政策論争への関心が薄かった有権者にとって、この月餅問題はあまりにも分かりやすい構図となった。国民党が議会の多数派という立場を振りかざし、政府への単なる嫌がらせのために零細業者や弱者にしわ寄せを押しつけたと受け止められた形だ。
いきすぎた引き締め策が民意の離反を招く歴史は、日本でも繰り返されてきた。江戸時代に老中・松平定信が進めた「寛政の改革」は、田沼意次時代の乱れた風紀を正そうと過酷な倹約令を強いたが、庶民から「白河の清きに魚も住みかねて」と痛烈に皮肉られた。その結果、田沼時代の19年に対し、わずか6年ほどで頓挫。正義や政権批判を掲げて過度な引き締めに走れば、社会の潤滑油まで奪い取って人心を失う、という教訓である。
台湾の選挙戦を大きく揺るがしているのは、たかが月餅、されど月餅という庶民感情の爆発である。日本でもクリーンな政治を訴える政治家は多いが、こうした庶民感情の機微を解さなければ手痛いしっぺ返しを食らうという、格好の反面教師と言えるだろう。
(岡田哲司/政治ジャーナリスト)
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