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記事全文を読む→悲願のJ1初昇格!水戸ホーリーホックを劇的に変えた林雅人コーチの「ゴール前に選手が湧いて出る」攻撃システム
J2参入から26年。ついに硬く高い壁を乗り越えた。水戸ホーリーホックが最終戦で大分トリニータを2-0で破り、J1初昇格を決めたのだ。しかも首位のV・ファーレン長崎が徳島ヴォルティスと引き分けたため、J2初優勝も飾ってしまった。
26年間も追い続けたJ1昇格という夢が遂に叶った…そんな表現をするメディアもあったが、そんなきれいごとではない。J2に参入してからの最高順位は7位(2019年)。ほとんどが二桁順位で、2014年からJ3降格が導入されたが、なんとか踏ん張ってきたというのが水戸の歴史だ。
これまでJ1昇格争いをしたとか、J1昇格プレーオフに進出したとか、あと一歩で昇格できなかった…そういう経験があるクラブが「J1昇格という夢がついに叶った」といえるのである。
水戸の歴史を振り返ってみると、資金難から何度かクラブ存続の危機に立たされた時がある。自前の練習場がなく、複数の場所を転々としていた時期もある。その後、那珂川の河川敷に専用練習場を作ったが、前日に雨が降れば、水が引かずに使えない。大雨が降って1週間も使えなかったことがあったという。
東日本大震災があった2011年、日立市出身で元日本代表の鈴木隆行がクラブを訪れた。災害に見舞われ経営が苦しいと聞いた鈴木は「僕に何かできませんか」と訪ねてきたのだ。当時の柱谷哲二監督は鈴木に「ピッチに立ってプレーしてくれないか」と言った。さらに「ただ、クラブにお金がない。年俸は払えないんだ」」と続け、鈴木はアマチュア契約選手として水戸でプレーした。柱谷監督は、2002年の日韓W杯で活躍した鈴木がプレーすることで、ファンやサポーターが少しでも元気になってもらえればと思ったという。
水戸の昨年の年間売り上げは約12億円。J2で下から数えた方が早い。だから毎年、選手の入れ替えが激しい。新人選手と他チームからのレンタルで選手を借りて、チームを作る。翌年は主力戦の何人かが移籍してしまい、レンタル選手は返さなければいけない。毎年、その繰り返しだった。
そんな水戸がなぜ、J1昇格を決めたのか。それは昨年5月に緊急的に監督に就任した森直樹の存在だ。2003年から選手として3シーズン、水戸でプレーし、引退後もそのままアカデミーのコーチや監督、トップチームのコーチに。水戸のいい部分も悪い部分も知り尽くしている人物だ。
残留争いをしていた水戸をどうにか残留させ、今季から本格的なチーム作りに着手した。運動量とアグレッシブな守備をベースに、ディフェンス面は森監督自身が担当。オランダのフィテッセのアカデミーでコーチや監督を経験してきた林雅人を、攻撃担当コーチに就任させた。
林コーチはそれまでの、ボールを奪ったら最終ラインでボールを回してビルドアップする攻撃をやめ「ボールを奪ったらゴールを目指せ」とタテに速い攻撃へと変えた。ボールを持っている選手を次から次に追い越していくことで、ゴール前に選手が湧いて出てくるような攻撃に変わっていった。その結果、森監督が担当する守備は失点34でリーグ2番目に少なく、得点は昨季の39点から55へと大幅に増えた。
低予算のためか、外国人の助っ人はひとりもいない。そんな水戸が来季、J1でどこまで通用するか。ハッキリ言って、かなり厳しい。ただ、来季のJリーグの日程を見れば、水戸にアドバンテージがある。来季のJリーグは秋春制に変わり、開幕は8月初旬になる。2月から6月に「100年構想リーグ」があるが昇格、降格はない。このリーグでJ1のレベルを実際に経験し、足りなかった部分を8月の開幕までに修正する時間がある。
いずれにしろ、来季の水戸は良くも悪くも注目される。新しい歴史の始まりだけに、良いスタートを切りたいところだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。
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