社会

東日本大震災「余震、いまだ止まず」(3-1) 決死ルポ 原発避難地域20キロ圏「境界線上の真実」

 昨年4月、日本国内に新たな「国境線」が引かれた。東電・福島第一原発事故を受けて、災害対策基本法に基づき設置された同原発から半径 20キロ圏内の「警戒区域」がそれだ。住民すら許可なしには立ち入れない同区域の周辺の取材を続けている、ジャーナリストの村上和巳氏が最新の状況をレポートする。

 遡ること、半年前の昨年9月、私は「国境線」を訪れていた。JR常磐線でいわき駅より北上すると列車は、久ノ浜駅で行き止まりになる。当時、政府は警戒区域外側に、福島第一原発から20~30キロ圏内を「緊急時避難準備区域」としており、久ノ浜駅以北、双葉郡広野町の広野駅までの2駅間が同区域に該当していた。
 同区域は法的に立入禁止にはなっていなかったが、現実は違っていた。自治体の判断で、住民の多くが避難を余儀なくされた。JR東日本も、この区間は代行バスを運行させていた。
 久ノ浜駅から朝一番の代行バスに乗車すると、摩訶不思議な現象に遭遇した。
 乗客は10人程度、しかも向かう先は残留住民が100人程度だった広野町。その先は無人の警戒区域が広がるにもかかわらず、道路はなぜか大渋滞。代行バスは信号もないところで3度も立ち往生し、20分程度で着くはずの広野駅まで、倍近い時間を要したのだ。
 広野駅前でバスの運転手にその疑問を投げかけると、次のような答えが返ってきた。
「福島第一の事故収束に携わる作業員と出入り業者、冷温停止中の福島第二原発と津波で被害を受けた広野火力発電所の復旧作業員で、合計延べ2万人の通勤ラッシュですよ」
 今年3月、私は再び広野町を訪れた。昨年10月に緊急時避難準備区域が解除され、現在は広野駅まで電車で行ける。駅周辺では時折、人は見かけるが、まだ住民が戻っていない雨戸を閉めきった家が目立つ。
 歩いて国道6号線を北上すると、普通車、クレーン車など、さまざまな車両がひっきりなしに行き交う。ある時は、警戒区域方向から走ってくる乗用車の運転席に作業服姿の女性を見つけた。非常に珍しい光景だった。
 途中、ドライブイン兼民宿が3軒ほど営業していた。タバコ屋、ラーメン屋、コンビニもある。広野町の住民が語るには、
「コンビニは緊急時避難準備区域解除後に営業を再開したのですが、あの周辺の店は作業員相手に繁盛して、この1年で5年分は売り上げた店もあるらしい」
 この道中の線量計の数値は広野駅前で、0・2マイシークロベルト台を示していた。東京の約2倍。国道6号線を1キロほど北上すると0・4マイシークロベルト台に上がり、さらに警戒区域入り口検問まで1キロ未満になると、0・6マイシークロベルト台と徐々に上がってくる。
 国道6号線の警戒区域南端、広野町と楢葉町の境界を楢葉町方向にちょっと入った地点にある検問が見えた時、突如、線量計の警報音が鳴った。数値は1・06マイシークロベルト。とても人が生活できる数値ではない。
 検問所は道路両脇にプレハブ小屋まで設置してあり、カメラを向けても出入りする車両がない瞬間にシャッターを切ることが難しいほど。前出の住民は言う。
「今でも朝夕は渋滞しますよ。先日は朝、通常は40分程度のいわきから広野までに2時間もかかったほどです」

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