事件
Posted on 2016年03月14日 01:53

埼玉・小川町「認知症妻殺害事件」容疑者が「15日間食事拒否」で死亡にいたった謎

2016年03月14日 01:53

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 一昔前の事件報道では「××容疑者は出された食事を残さず食べている」といった記述がよく使われた。いかにも反省の色がない印象を与える表現だが、犯罪者であっても腹が減るのは当然で、責められるいわれはない。一方で、出された食事を拒否し続け、起訴される間もなく衰弱死する道を選んだ容疑者がいた。

 埼玉県小川町で介護中の妻(77)を殺害したとして2月8日に殺人容疑で逮捕された國崎誠一容疑者(83)が、その後約2週間にわたり食事をほとんどとろうとせず、2月23日に搬送先の病院で衰弱死した。県警担当記者が解説する。

「逮捕時に『認知症の妻の介護に疲れた』と話して以降、取り調べにも応じていなかったといいます」

 妻・恭子さんと2人で暮らしていた國崎容疑者は2月5日夜、自宅で恭子さんの首を刃物で刺して殺害。その後、みずから「妻を刺した」と110番通報したが、その際、國崎容疑者の首にも切り傷があり、警察は無理心中を図ったものの、死に切れなかったと見ていた。

 國崎容疑者宅付近の住民によると、

「恭子さんは2、3年前から認知症を患っていたようです。ヘルパーなどは頼まず、旦那さんが1人で介護をしていたんですが、『1時間前に昼食をとったことすら忘れてしまう。妻の世話が大変だ』と話していました」

 別の住民も曇った表情でこう話す。

「近くのスーパーまで連れ添って買い物に行く姿をよく見かけましたよ」

 事件の数日前には國崎容疑者自身も体調を崩し、数日間入院していたという。

 その國崎容疑者が他の容疑者と異なることに捜査員が気がつくのは、取り調べが始まってすぐのことだった。前出・県警担当記者が首をかしげながら言う。

「逮捕後の國崎容疑者は、留置場でおかゆを少し食べたほかは、水やお茶しか口にしようとしなかったようです。食べない理由も話さないままで‥‥」

 取り調べを受けている期間中、國崎容疑者は町内の病院に通院していた。病院関係者が明かす。

「首の傷の手当てやガーゼの交換などで、捜査員が付き添って何回か来ています。ただ、その間も一貫して食事は口にしなかったといいます」

 83歳という高齢だけに、当然ながら、何も食べなければ体は弱っていく。

「その後、衰弱がひどくなったため、14日と16日に病院で診察を受け、17日に入院することになりました。しかし、この時点ですでに話ができるような状態ではありませんでした。かなり危ないというか‥‥それでもなお、食事は拒み続けました」

 そして2月23日午前、死亡が確認された。

「15日間にもわたって食事を拒否した理由は、ついに語られませんでした」(前出・県警担当記者)

 殺人を犯した罪は重いとはいえ、何とも言いようのない悲哀を内包する事件なのである。

 厚生労働省の調査によると、介護が必要な65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、介護する人も65歳以上という「老老介護」世帯の割合は、13年に初めて5割を超えた。

「介護が必要になった原因のトップは脳卒中ですが、2位が認知症。団塊世代の約半数が65歳以上になっていることから、老老介護の世帯は今後も増加が見込まれます」(医療関係者)

 老老介護疲れによる絶望が原因とされる殺人事件も増加。警察庁の統計によると、07年以降は、年平均46件。昨年も2月に北海道と滋賀県、7月に神奈川県で起きた事件が大きく報道されている。

 食事拒否による餓死の道をみずから選んだのは、絶望感から殺してしまった妻に対する、せめてもの贖罪だったのかもしれない。

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