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早世のマドンナたち① 田中好子(1)

 美しい花は、枯れてしおれる前に命を燃やし尽くす。誰にも最期を悟られることなく、鮮烈な記憶のみを残して去ってゆく‥‥。今なお「忘れ得ぬ君」である女優や歌姫は、いかにして短い生涯を送ったのか。第1回は訃報から1年がたった「キャンディーズのスーちゃん」である。

「メインボーカル交代」の真相

〈私も一生懸命病気と闘ってきましたが、もしかすると負けてしまうかもしれません。キャンディーズでデビューして以来、本当に長い間お世話になりました。特に蘭さん、美樹さん、ありがとう。2人が大好きでした。

 もっともっと女優を続けたかった。お礼の言葉をいつまでもいつまでも伝えたいのですが、息苦しくなってきました─〉

 昨年4月21日に乳がんで亡くなった田中好子(享年55)の葬儀会場に肉声テープが流れ、参列者を驚かせた。夫である小達一雄が「第2章第1幕のスタート」だとして、カチンコを鳴らしたのである。

 この葬儀には、キャンディーズのメンバーだった伊藤蘭、そして引退していた藤村美樹も久々に公の場に姿を見せた。それぞれのスピーチは、12枚目のシングル「哀愁のシンフォニー」のタイトルさながらに悲しく共鳴した。

〈貴女が旅立つ時、1人で寂しくないように、ミキさんと一緒に貴女の名前を何度も呼びました。ミキさんと私にとっていつまでも特別な存在のスーさん。ずっとずっと愛しています〉(伊藤蘭)

〈私たちもいずれそちらに行きますので、それまで待っててね。また3人で歌いましょう。私たちは永遠にキャンディーズだからね。ありがとうスーさん。愛してるよ〉(藤村美樹)

 この日より24年前、筆者は偶然、人前で「3人が揃った最後の姿」を目撃している。87年2月、渡辺プロ・渡辺晋社長の葬儀に“お忍び”の形で3人が参列したのだ。

 ただし、カメラの放列もリポーターのマイクも一切を拒否し、こわばった表情で足早に去ってゆく。その毅然とした姿は、解散後も揺るぎのない「キャンディーズの絆」を見るようだった‥‥。

 渡辺プロの社員だった篠崎重は74年、キャンディーズのデビュー2年目からマネジャーとして加わった。3人が有楽町の「アマンド」でハンバーガーを食べ、チャート誌の「オリコン」を広げて気勢を上げていた姿を思い出す。「早く左ページ(チャートの50位内)に入りたい」「いつかは二本線(トップ10位内)を超えないと」

 その熱意は篠崎が担当して間もなく成就する。75年2月発売の「年下の男の子」が初めてベストテンに入り、26万枚のヒットとなった。これが5枚目のシングルだが、4枚目まではスーがメインボーカルで、皮肉にもランが“センターポジション”に立ったとたんのブレイクだった。

 現在の「AKB 48総選挙」よりもシビアな交代だが、真相を篠崎が明かす。

「当時、1番年下のスーは高校3年生で、出席日数の問題があった。僕が担当することになって、お父さんにスケジュール帳を持って行って『平日、午後1時までは絶対に学校に行かせます』と約束したんです」

 ランのファンレターの数が急伸していたこともあったが、実際はスーを無事に卒業させるため、メインのパートを交代させた。早い時間に行われる歌番組のリハーサルはランとミキの2人でスーの分までカバーしていたのだ。

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