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記事全文を読む→早世のマドンナたち① 田中好子(3)
「最近、めまいがひどくて…」
飲酒運転で息子を死なせた男(袴田吉彦)が釈放され、田中好子が演じる母親のもとへ謝罪に訪れる。
実話を基にした作品であり、母親の怒りや悲しみを表現するため、控室での田中は袴田と一切の会話をしなかった。その役作りを監督である塩屋は「一生忘れられない」と言う。
「袴田君ほど実績のある役者が、田中さんの没頭ぶりを『怖くて怖くてしかたなかった』と言っていましたね。本番までは絶対に顔を合わせなかったし、演技上の憎しみを募らせていました」
2人が対峙する場面は、2台のカメラをクロスする形で置き、約10分間の長丁場を1シーン1カットで撮った。田中は一瞬のミスもなく、編集の必要すらないほど完璧に演じ上げた。
また闘病生活はひそかに始まっていたが、周囲にはまったく気づかせなかったと言う。
「弟さんや義妹の夏目雅子さんを早くに失ったり、クランクイン直前までご主人のお母さんを看護していたり、命に対する尊ぶ姿勢があられたんだと思います」
田中との最後の会話は、
「また新作を撮る時は呼んでほしい」という微笑みだったが、かなうことはなかった‥‥。
作詞家の湯川れい子は、小達一雄との交流から田中とも知り合った。湯川が名誉学校長を務める音楽スクールで、田中には名誉顧問になってもらっていた。
「最後に会ったのは好子さんが亡くなる1年前。東京と大阪のスクールの入学式に来てもらったんです」
それまでも闘病生活が続いていたはずだが、田中はそぶりすら見せなかった。ただ、ふとした弱音を漏らしたことを憶えている。入学式の挨拶という役目があるため、6センチほどのヒールを履いていたが、付き人に手をつないでもらって歩いていた。
「私に『最近、めまいがひどくて何でしょうねえ』っておっしゃったんですよ。そのせいで視界が二重に見えて、立って歩くのが怖いと。撮影でも『カメラに目線を合わせなきゃいけないのに、どこ見ていいかわからないことがある』って」
それでも笑顔は絶やさず、深刻さは露ほども感じさせなかった。やや痩せているようにも見えたが、夫である小達から「ダイエットのしすぎ」と一笑に付されている。
湯川はテレビ局からの取材要請で「突然の訃報」を知った。そして自身のツイッターに以下のように綴っている。
〈とてもとても自然体でステキな人だった。あまりにビックリして、涙も出てこない〉
湯川は小達とともに、田中が亡くなった翌月に仙台へ出向いた。田中が死の直前まで気にかけていた被災地を回り、海岸沿いでは遺影を海に向けた。
あれから1年─、
〈必ず天国で被災された方のお役に立ちたいと思います〉
死を悟ってなおの責任感を、襟を正して聞くべき役人が少なくないはずだ。
アサ芸チョイス
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