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その老夫婦が避難者仲間に語った内容だが、いわき市で避難生活を送る60代の男性は、その話を聞いて自身の経験がよみがえってくるという。
「私は戸建ての借家住まいですが、転居時にやはり挨拶品持参で避難者であることも明らかにして近所を回りました。1軒だけニコニコしながら『お気遣いなく』と言って挨拶品を受け取らなかった。初めは好意的な対応と受け止めていたが、後日になってその人は道で挨拶しても無視。さらに『賠償金があるくせに借家。挨拶品が見るからにセコい』と陰口を叩かれていたことを知りました。挨拶品を受け取らなかったのは、おつきあいしませんという意味だったんですね‥‥避難者の家のガラスが割られたとか、ロケット花火が打ち込まれたとか、大きく報道されたせいで、露骨な嫌がらせはなくなったけど、何年たっても、心根の部分は変わっていないですよ」
いわき市で避難生活を送る双葉郡の人々に話を聞くと、心ない行為に悩まされた事例は実に多い。
「外出先で1000円もしないランチを食べながら友人と東電への賠償申請の苦労話をしていたら、私たちの話が聞こえたんでしょうね。店内にいた男性が近くに来て『賠償金があると、イイもの食えるんだね』と言われた」(30代主婦)
「値段の安さだけで購入した中古車の車体の色がたまたま赤だった。すると、近所の方から『いや、さすが贅沢できる身分ですね』と皮肉られた」(50代無職)
一方のいわき市民からは、「金持ちの避難者が買いあさったせいで、地価が高騰して地元の人間が買えない」「病院が混雑するのは避難者が増えたせい」などと、確かに一部からは怨嗟の声を耳にした。ところが、正反対の意見を口にする地元住民も少なくない。
「避難者イジメをするのはごく一部。はっきり言って性格が悪い連中だけ。避難者がいることで、むしろ町に活気が出たと思う」
60代の飲食店経営の女性がそう言えば、50代の団体職員の男性はこう話す。
「地価高騰と言うけど、誤解ですよ。震災前のいわきは不動産不況で、どうにもならなかった。その不況前の水準よりは上がったが、騒ぐほどではないんです」
軋轢の原因となっている賠償金の一つ、強制避難者への東電からの慰謝料(1人月10万円)は、来年3月で打ち切られる方針が示されている。政府は今春にも避難指示の解除を拡大する予定だ。この結果、浪江町、富岡町、川俣町、飯舘村の3万2000人が帰還できることになる。しかし、避難者の多くは帰還を望んでいない。荒れ果てた故郷よりも避難先での安定した生活を選ぶと見られている。
県内で起きている「福島の断絶」は、時が解決してくれるのだろうか。いわき市で避難者の支援活動を行う男性が話す。
「地方の特性として『あの人は避難者』『あの地域は避難者が多い』という話は時間がたっても残っていく。だが、地元住民も困難を抱えた人を受け入れたという自負を持っていいし、避難者も生活を再建させた自負を持っていいはず。早くそうなってほしい」
震災が落とした影が薄れるには、6年という歳月はまだ短すぎるようだ。
アサ芸チョイス
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