芸能

ビートたけしの金言集「“悪乗り合戦”がスタートしたらノリノリ」

 その昔、殿の付き人を勤めていた、大変内気でおとなしい若手が、夜、繁華街を歩いていると、タトゥーの入った兄ちゃんに因縁をつけられ、軽く殴られたあげく、転んだ際に腕時計を壊してしまうという、なんとも運の悪い“通り魔的災難”に遭遇したことがありました。

 翌日、少しばかり腫らした顔を下げてやってきた、その若手を認めた殿やわたくしたちは、“昨夜のとんだ災難”について早々と事情聴取を行うと、みな口々、「悪いやつがいるもんだ」「しかしお前は運が悪いな」と同情的感想を言いあったのです。

 が、最初はみなと一緒に同情していた殿でしたが、そういった“予定調和の空気”に飽きたのか、

「あれだな。お前、自分の手でガンガン自分の顔を殴ったり壁にガンガン頭ぶつけたりしてよ。もっと顔腫らして警察行って、『これだけやられました。犯人捕まえてください』ってやっといたほうがいいだろ」

 と、実に楽しそうにふざけ出したのです。それを合図に、その場の空気が“よし、ふざけ合戦スタート”となり、すぐさまわたくしも「時計の他にも、家にある洗濯機とか炊飯ジャーなんかを壊して持ってってよ。『これもやられました』って言って、全部新品に替えてもらえよ」と調子に乗って被せていると、こういった“悪乗り合戦”では決まって一番ドギツイことを言う殿が案の定、

「あと家帰ったらすぐトイレの洗剤とか殺虫剤とか体に悪そうなもの全部飲んでよ、フラフラになりながら警察行って、『もう死にそうです。犯人をみつけてください』ってアピールしとかないとダメだろ」

 と、ノリノリでアドバイスをされたのです。

 殿はこういった、シリアスな話をちゃかしてふざけるのがことのほか大好きであり、話題が深刻であればあるほど、殿の“おふざけ強度”は強まります。

 そんな殿も、よくわからないところがあって、殿が開始されたおふざけ合戦に、こちらもあーでもないこーでもないと被せていると、いきなり“マジな返し”をされることが結構あるのです。以前、わたくしの母が所沢でスナックをやっている、といった話題から殿の悪ふざけが始まり、

「お前んとこは常連客に保険かけて、ヒ素とかトリカブトとかを少しずつ酒に混ぜて飲ませてんだろ」

 だの、

「お前の母ちゃんはまだ2階で客とってんのか?」

 だのと、青天井状態でふざけまくっていた殿に、わたくしも合わせる形で、

「殿、失礼なことを言わないでください。母は客はとってません。去年できっぱり辞めました! ただ殿がどうしてもとおっしゃるのなら、特別に復活して、30分8000円でいかがですか」

と、意気揚々とふざけると、殿は瞬時に真顔になって、

「俺はいい!」

 と、ぴしゃり。どうも、わたくしのおふざけ具合が、お口に合わなかったようなのです。師弟関係とは、なんとも難しいものです。

ビートたけしが責任編集長を務める有料ネットマガジン「お笑いKGB」好評配信中!

http://www.owarai-kgb.jp/

◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!

カテゴリー: 芸能   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
あの「号泣県議」野々村竜太郎が「仰天新ビジネス」開始!「30日間5万円コース」の中身
2
3Aで好投してもメジャー昇格が難しい…藤浪晋太郎に立ちはだかるマイナーリーグの「不文律」
3
高島礼子の声が…旅番組「列車内撮影NG問題」を解決するテレビ東京の「グレーゾーンな新手法」
4
「致死量」井上清華アナの猛烈労働を止めない「局次長」西山喜久恵に怒りの声
5
皐月賞で最も強い競馬をした3着馬が「ダービー回避」!NHKマイルでは迷わずアタマから狙え