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記事全文を読む→深作欣二「千葉ちゃん、ウソって観客に思わせたら負け」
映画界の風雲児となっていた角川春樹に、深作はこんな提案をしている。
「山田風太郎の原作で『おぼろ忍法帖』というのがおもしろくてね」
これに角川が答える。「だったら『魔界転生』がいいかもしれないよ」
実は改題しただけの同じ作品であり、意見が一致したことで「魔界転生」(81年/東映)は映画化の運びとなった。深作は忠臣蔵を扱った「赤穂城断絶」の窮屈さに疲れ、壮大な伝奇ロマンに賭けたのだ。
同作では天草四郎時貞(沢田研二)が魔力を使い、宮本武蔵(緒形拳)や宝蔵院胤舜(室田日出男)らの剣豪を現世に蘇らせ、幕府の転覆を狙う。この魔界衆に立ちはだかるのが、千葉が扮した柳生十兵衛だった。実在した人物たちが荒唐無稽のストーリーを展開するが、千葉によれば、深作は実に楽しそうだったという。
「こういう話は深作さんは大好きだから、すごく乗って、おもしろがりながら撮っていたね。俺に『千葉ちゃん、ウソの世界をどうリアルに撮るかだよ。ウソって観客に思わせたら負けだよ』って」
リアリティを与えたのが、十兵衛と父・柳生但馬守(若山富三郎)が対峙するシーンである。当時、日本一の殺陣の美しさを誇った若山に、千葉が燃え盛る炎の中で渾身の集中力で臨んでゆく。
「もう3回はテストをやりたかったけど、若山さんはあっさりと『真一、やろうか』だから。火が燃えているセットでもあり、あんなに緊張したことはなかった。さすがに監督も、俺と若山さんの殺陣には何も言わなかったよ」
この撮影から10年ほど経った日、ロスに移住していた千葉のもとへ深作から連絡が入った。ロスへ行くのでホテルを探してほしいと言うのだ。千葉は自分のマンションの隣にあったホテルを予約し、深作も1泊はしたのだが、翌日からは千葉の部屋に転がり込んできた。理由は「1人でいるのは寂しい」というシンプルなものだ。
「俺が監督の好きなナスの塩もみやら作って、2人でずっと酒を飲みながら映画の話をして。毎年、正月は双方の家族が合わさって過ごしていたけど、そこでも夜になると飲みながら映画の話ばかりだったね」
文芸作品に取り組んでも「文芸アクション」と呼ぶ深作にとって、千葉真一、そしてJACの出身者は欠かせないものだった。83年に大ヒットした「里見八犬伝」(角川映画)では、8人の犬士の半分(千葉・真田広之・志穂美悦子・大葉健二)をJAC勢で占めた。そのことに千葉が礼を言うと、涼しげに「ちゃんとしたキャスティング」と深作は返す。
千葉は遺作となった「バトル・ロワイアルⅡ」にも出演しているが、深作の子息・健太の企画を、なぜ欣二が引き受けたのか‥‥。
「すでに体も悪くなっていて、それでも自分の持っているすべてを健太に伝えたいという思いだったんだろうね。実はクエンティン・タランティーノが俺と深作さんに一緒にやりたいと言っていたんだけど、深作さんは健太の企画のほうを選んだんだよ」
千葉の話を聞いたその日、菅原文太が俳優業の引退と政治支援グループの結成を発表した。千葉は、自分に言い聞かせるように静かに言った。
「俺は深作さんと同じで、死ぬまで『ヨーイ、スタート!』の世界にいたい」
〈文中敬称略、次回は深作健太〉
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