芸能

日本レコード大賞 炎の四番勝負!<第3回>「1980年~五木ひろしVS八代亜紀~」(2)

20131219g

 ひのきしんじが五木の音楽ディレクターを担当して2年が過ぎた。あれほどヒット曲を量産してきた五木が、初めて停滞期に入ったのだ。レコード会社にとってヒットを出すのは義務であり、期待に応えられない自分はクビになってもしかたないと思った。

「ひのきちゃんは自分の思いどおりにやっていないんじゃない? 俺は独立するから、これからも一緒にやろうよ」

 こうやって引き留めたのは五木である。ならば、停滞を吹き飛ばすような大ヒット曲を作ってあげたい。五木は従来の事務所を離れて「五木プロ」を立ち上げ、心機一転の勝負曲が必要とされた。

「僕はもともと演歌畑の人間じゃなかったので、次の曲の作詞に、ふと、ポップスのたかたかしがいいと思ったんです」

 ジャズギタリストから作曲家に転身した木村好夫のメロディに、西城秀樹や松崎しげるに書いていたたかたかしの詞を乗せた。それが100万枚近い売上げを記録した「おまえとふたり」(79年)である。ただし、五木自身はこの曲がシングルになるとも思っていなかったという。

「彼の技量からいけば、この曲は80%以下の力で楽々とこなせるやさしい歌。実際、レコーディングも3テイクで終わっていた」

 冒頭で岡千秋が言ったように、五木は100点の曲を120点に、ひのきに言わせればC級の楽曲でもA級に持っていける歌唱力を持つ。ただし、あまりにも高度になりすぎると「大衆の支持」とかけ離れてしまう。

「だから三振に終わるかホームランとなるか、そんな歌でいいと思った」

 後押ししてくれたのは、レコード会社の総帥だった徳間康快である。サンプル盤を聴いた瞬間に、号令を発した。

「ひのき、これでいい。これでいけ!」

 70年代の終わりに蘇った五木は、立て続けに「倖せさがして」(80年3月)、「ふたりの夜明け」(80年8月)と大ヒットを連発。この流れは「しあわせ三部作」と呼ばれ、80年の賞レースに堂々と乗り込む成果を作った。

 さてこの年、大賞争いだけでなく、新人賞もかつてない激戦となった。松田聖子、田原俊彦、河合奈保子らが並んだ「黄金の80年組」に、八代と同じ事務所の岩崎良美も名を連ねる。

「私のデビューのお披露目が、八代さんの新宿コマ公演だったんです。八代さんが『今度デビューする良美ちゃん』って紹介してくださって、私が花束を持って円形の舞台に上がるはずが、緊張してまっすぐ歩けなかったですね」

 当時は歌番組が全盛の時代である。トップ歌手の八代の後輩であり、さらに岩崎宏美の妹であることは、自身のブッキングにも大きく作用したと感謝する。

 やがて秋口から賞レースのシーズンとなり、良美は連日のように「審査」の対象となる。

「正直に言うと、この場から解放されたいと思っていました。本命はトシちゃんか聖子ちゃんかで、自分は獲れない。だけど席に座っているのは、どうしていいのかわからなかった」

 戦場にいた者のみが知りうる事実である。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<中年太り>神経細胞のアンテナが縮むことが原因!?

    加齢に伴い気になるのが「中年太り(加齢性肥満)」。基礎代謝の低下で、体脂肪が蓄積されやすくなるのだ。高血圧や糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病に結びつく可能性も高くなるため注意が必要だ。最近、この中年太りのメカニズムを名古屋大学などの研究グル…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<巻き爪>乾燥による爪の変形で歩行困難になる恐れも

    爪は健康状態を示すバロメーターでもある。爪に横線が入っている、爪の表面の凹凸が目立つようになった─。特に乾燥した冬の時期は爪のトラブルに注意が必要だ。爪の約90%の成分はケラチン。これは細胞骨格を作るタンパク質だ。他には、10%の水分と脂質…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「王貞治の言葉」で一気に現実味を帯びる「田中将大の移籍先」に「ソフトバンク」
2
ソフトバンクFA甲斐拓也「茶髪バッサリ」が示唆する「あの金満球団」への「移籍準備」
3
久里亜蓮「まさかのオリックス移籍」人的補償でプロテクトから外れる候補に「超意外な大ベテラン」
4
「バス旅」情報続々で…「ポスト蛭子能収」は2人の「クズ芸人」太川陽介が認めるのはどっちだ
5
「あと1年続投なら違う結果が出た」中日・立浪前監督の退任に異を唱えた元コーチの見解