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藤井といえば、ルーティンも欠かせない。デビュー直後には、将棋会館近くの中華料理店から注文する「勝負めし」が注目されてきたが、最近になって【5】「スーツにスニーカーの新ルーティンだ」と評判になっているのだ。
「藤井クンといえば、対局前の日課としてお茶を飲むシーンがしばしばキャッチされていますが、対局のファッションにもルーティンを採用している。直近のタイトル戦二局では着物姿を披露したことが話題になったが、棋聖戦一局目はいつもどおりのスーツ姿で登場。慣れない所作や着崩れのリスクを懸念しての対応だったようだが、対局後の会見ではその足元に注目が集まりました。というのもオーダーメイドのスーツ姿でしたが、革靴ではなく、フランスのブランド『パトリック』の黒いスニーカーを履いていたんです。デビュー2年目から履いている靴で、これまでもインタビューなどの立ち姿で何度も確認されてきた靴でした。愛着のある靴を履くことで、大事なタイトル戦の初陣を落とすまいとする願掛けの意味を込めたのかもしれません」(将棋関係者)
藤井のみならず棋士はとかく「ゲン担ぎ」やルーティンにこだわるが、指し手にこだわらないのが、藤井の強さの源泉といっても過言ではない。大橋六段によれば、
「【6】序盤研究のバリエーションの多さは、他のプロ棋士と比べても突出しています。対局がスタートする駒組の段階に先手・後手でそれぞれ一つずつ得意な戦法を用意することが多いと思います。ただし、藤井七段はそれぞれ3~4パターン持っていて戦術が幅広い。そのため、相手によって柔軟な戦術を取ることができます。そうなると対戦する相手は対局前の事前準備にかなりの時間を割くことになります」
藤井の戦術の多さは対局相手の知るところ。この事前の情報戦もまた藤井のアドバンテージになっているようなのだ。さらに中盤・終盤でも先のような変幻自在の指し手で相手を翻弄する。大橋六段も証言する。
「中盤は具体的な指し手が定まっていない難しい局面になります。この駒組から戦いに切り替わる場面では天文学的な数字の読みを行っていると思います。決して直感ではない根拠のある論理的な指し口でリードを広げていきます。終盤に持ち時間が少なくなるのは序盤・中盤の未知の局面に時間を要しているからなのです」
さらに藤井が「怪物」と呼ばれるゆえんは他にもある。【7】どんな局面にも動じないポーカーフェイスこそ、ベテラン棋士をも圧倒する雰囲気を漂わせることになるという。
「プロ昇格前の三段リーグでの初対局の頃から今のスタイルが確立されていました。プロ棋士でも難しい局面になると頭をかいたり、首をかしげたり、ボヤいたりするものです。藤井七段はずっと頭をフル回転させている様子で、表情からは何も読み取れません。多少の形勢のよしあしでは表情が変わりませんからね」(大橋六段)
唯一、対局中に熟考する際には、上半身を前後に揺らす癖があるが、
「あまりにも前のめりに揺れるので盤面に後頭部が映るシーンが多かった。ただ、タイトル戦ではカメラに頭を抜かれることも少なかったので、癖を克服したのかもしれません」(将棋ウオッチャー)
もはや弱点はないのだろうか。
「私が対局した6月10日の王座戦の予選でも序盤・中盤とリードされていて、藤井七段の勝ちパターンでした。ただ、一手だけ悪手を指されたことで形勢が逆転して私が勝利することができました。ミスでも飛び出さないと勝つことが厳しいくらい強いんです」(大橋六段)
将棋界ではトップクラスともなれば、一手のミスが致命傷になる世界。9日の棋聖戦第三局でも「新局面」が生まれるに違いない。
(アサヒ芸能7月16日号に掲載)
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