将棋界に新たな歴史が刻まれようとしている。日本将棋連盟通常総会で、女流最高峰タイトル「白玲(はくれい)」を通算5期獲得した女流棋士に「プロ棋士」資格を認める規定が可決されたからだ。
これまでプロ昇段の道は奨励会三段リーグ突破か、編入試験合格だけだったが、女流棋戦での功績でも四段昇段が可能になる。
「白玲戦」は2020年創設の女流棋界最高位の七番勝負で、優勝賞金4000万円に加えて特別賞1000万円、合計5000万円もの高額賞金がかけられている。新規定では、通算5期制覇を果たした女流棋士が「クイーン白玲」の称号を得て、希望に応じてフリークラス編入の上、正式に四段へと昇段できる。
現時点では「白玲」を通算5期獲得した棋士はいないものの、通算3期の西山朋佳女流二冠や、通算1期の福間香奈女流六冠らが有力候補と目されている。彼女たちが勝ち星を重ねることで、早ければ数年内に新規定が適用され、男性棋士との公式戦が一気に現実味を帯びてくる。
羽生善治前会長に代わって新たな将棋連盟会長に選ばれた清水市代女流七段は就任会見で、こう言った。
「身に余る大役ですが、『継承』と『挑戦』を掲げ、皆さんとともに歩んでいきたい」
清水新会長は長年にわたり、女流棋界の第一線で数多くのタイトルを獲得し、2017年には女流棋士として初の常務理事に就任。女子プロ育成や運営に深く携わってきた実績が高く評価されての人事だった。
一方で、伝統的な奨励会ルートを経ない昇段には、懸念を示す声がある。「棋士の質をどう担保するのか」という議論は続きそうだが、変化を恐れて機会を失うことへの危機感は広がっている。制度改革への期待と不安が入り交じる中、将棋連盟は新しい時代への第一歩を踏み出した。
将棋界初の女性プロ棋士誕生に向けて、盤上ではすでに第一手が指されている。今後の女流タイトル戦や四段編入の行方が、将棋界に新たな風を吹き込むだろう。
(ケン高田)