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記事全文を読む→北林谷栄、“凄み”への豹変熱演でも魅了した「ニッポンのお婆ちゃん」名シーン
2010(平成22)年4月27日、北林谷栄(きたばやし・たにえ)が死去。享年98。100歳が間近い大往生である。北林はその顔を誰もが知る「お婆ちゃん女優」であり、記憶の中の北林は常に老け役であり、「ニッポンのお婆ちゃん」を体現する存在である。
1950年に宇野重吉、滝沢修らと「劇団民藝」を創立。時に、北林39歳。宇野36歳、滝沢44歳であったが、その後、今井正監督、今村昌平監督作品で「お婆ちゃん女優」の地歩を固めることになる。数ある作品の中でも「スーパーお婆ちゃん」ぶりが圧倒的なのが、1991年1月15日公開、岡本喜八監督「大誘拐 RAINBOW KIDS」。
北林演じるのは、紀州和歌山の山林王。この山林王を誘拐し、身代金を取ろうと考えたのが風間トオルらが演じるチンピラ3人。しかし、この山林王・柳川家当主(北林)と3人のチンピラ達では「役者」がハナから違っていたのである。誘拐に成功し、身代金を要求する段になって、「5000万円」を提示する3人組に激怒する北林。
ここからが、北林スーパーお婆ちゃんの真骨頂。「なんぼ言わはった?」「アンタ、この私をなんと思うてはる! 痩せても枯れても大柳川家の当主やで」と啖呵を切り、身代金は、「切りよく100億や、それより下で取引されたら末代までの恥さらしや」と人質本人が身代金アップを提案! ここから、物語が回り始めるのだが、北林の顔に凄みが加わり、生き生きと輝き始めるのである。風間に言わせれば、「丸描いて、チョンチョンチョン」の静かに穏やかだった顔が、以後、時に、嫣然と微笑み、時に憤怒の表情を見せることになるのである。
さて、この誘拐捜査の陣頭指揮を取るのが、和歌山県警本部長役の緒形拳。北林とは旧知のしかも、北林は緒形の恩人でもありという趣向。
犯人との接触、北林の無事を伝えるミッションとも、TV・ラジオを使った生中継であり、身代金受け渡しの攻防など劇場型犯罪の様相を呈する「大誘拐」事件だが、果たして、結末は如何に…。エピローグで明かされる「100億円」の意味が、胸に迫る。そして、その矛先は、とてつもない「あるもの」に向けられていた。
天藤真の原作とリンクし、共鳴した岡本喜八のテーマを一身に演じた北林の「老獪」が生む、心地良い余韻こそ味わってほしい。
(文中敬称略)
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