芸能

宮本信子を暗い穴から引き上げた「伊丹十三の遺書」染み入る言葉/壮絶「芸能スキャンダル会見」秘史

 もし、最愛の人が自分ひとりを残して突然、向こうの世界に旅立ってしまったら…。悲しみがそうたやすく癒えることはないだろう。しかし、悲しみに暮れるだけでなく、あえて公の場で自分自身の心情を告白することで、一歩を踏み出すためにもがいてみる。そんな忘れられない記者会見が、98年2月26日の宮本信子のそれだったように思う。

 夫である伊丹十三監督が衝撃的な飛び降り、という形で命を絶ったのは、前年12月20日である。それから2カ月間、いっさい公の場に出ることのなかった彼女が、テレビ東京のドラマ「飛んで火にいる春の嫁」(4月15日放送)に出演することになり、共演者の小林桂樹や田中好子らと、制作発表会見に臨んだのだ。

 ドラマでの宮本の役は皮肉にも、夫に先立たれた寿司屋の女将。伊丹と結婚して28年。妻として女優として、生活の全てを分かち合ってきた彼女は、突然突き付けられた現実を、こんな言葉で振り返る。

「昨年の暮れに、身も心もバラバラになりました。私、一生分、泣きました。骨壺を叩いては泣き、撫でては泣き、全てに腹が立ち、深く暗い穴の中に入ってしまったようになりました」

 しばらくは誰にも会えず、ただただ夫の映画を繰り返し見ては、涙するばかりだったという。しかし、そんな彼女を再び奮い立たせてくれたのが、遺書にあったこんな言葉だったという。

〈宮本さんのこと、よろしくね。日本一の妻、母、女優ですからね〉

 そして1月10日、このドラマの台本が彼女のもとに届いたという。

「現実に私を引き戻してくれたのは、この仕事でした。悲しみや苦しみは置いておいて。私は女優ですから、女優として仕事で乗り越えていかなければいけないと…」

 夫である伊丹監督から「日本一の女優」と言われ、その言葉を支えに最高の女優を目指し、懸命に努力してきた。だからこそ、宮本は最後に笑顔でこう語った。

「私は今、伊丹の愛情に支えられながら生きています。伊丹はもう死んでしまいましたけど、私は生きていますから。私はこれからの人生を、すごくしっかりと生きていこうと思っています」

 共演者やスタッフだけでなく、集まった報道陣をも涙させる、まさに伊丹映画のワンシーンのようなこの記者会見。天国の監督はどんな思いで見つめていたのだろうか。

(山川敦司)

1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。

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