社会

江戸町奉行の同心が「連続放火魔」になった「高揚感と謝礼」のワナ

 犯罪を取り締まるはずの警察官が不祥事を起こすのは、なにも今の時代に限った話ではない。江戸時代、大江戸八百八町の治安を守る同心が、なんと希代の連続放火犯だったというから、驚きだ。

 この男は小櫛金之助という、江戸町奉行所の同心だった。

 警察業務を執行する廻り方同心などの数は、南北奉行所を合わせても30人足らず。しかも30俵2人扶持の薄給の立場だった。

 30俵2人扶持は米に換算すると、約2340キロ。現在、米10キロの価格は約4000円。年収にしてわずか93万6000円にしかならない薄給だ。

 にもかかわらず、当時、人口100万人に達した世界一の大都市・江戸の治安を維持しなくてはならないストレスは、並大抵でなかっただろう。

 当時の江戸は火事が名物のひとつで、火事好きで悪趣味な人間は多かった。小櫛もちょっとしたボヤが起きるだけで「火事だ、火事だ」と大騒ぎ。同僚からは「ぼや金」と呼ばれるほどになっていた。

 そんな小櫛が連続放火という大罪を犯すようになったのは、嘉永四年(1851年)、四谷で発生した大火事がきっかけだった。現場近くにあった親戚の家に駆けつけて大いに働き、後日、謝礼をもらったのがいけなかった。

 火事の高揚感を味わい、達成感がある。その上、感謝されて実入りもある。以降、火事にのめり込むようになったのである。

 木と紙でできた家が多い江戸でも、そう都合よく火事は起きるはずもない。そのため、ついに火を付けて回るようになっていく。

 犯行は異常だった。放火したのは牛込から四谷にかけての寺ばかり、計5件。しかも「夜が怖い」という理由で、昼間の犯行だった。昼間でもあまり人がいない寺は、格好の犯行現場だったに違いない。

 だが、四谷の「宗福寺」で犯行に及んだ際、寺の小僧に捕まったというから、なんともお粗末な話だ。

 江戸時代、放火は大罪。取り調べの末、獄門にかけられることになったが、処刑の前に牢屋で獄死したと伝わっている。

(道嶋慶)

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