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「慶應びいき」を生んだ高校野球から郷土感が消える…仙台育英「宮城県出身の登録選手」は5人だけ

 史上7校目の夏連覇がかかった仙台育英に107年ぶりの優勝がかかった慶應義塾高校が挑んだ、今年の夏の全国高校野球決勝戦。

 決勝前日の8月22日、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で「慶應びいきのこの世論の雰囲気!」と吠えたのは、仙台育英の地元・宮城県出身のコメンテーター、玉川徹氏だった。

「育英も昨日、試合やってんですよ。VTRが1秒もなかったよね。1秒あった? どういうつもり?」

 と、怒りの矛先は番組スタッフにも向けられた。同じく同日のコメンテーターで早稲田大学出身の菊間千乃も、玉川氏に同調した。

 菊間は2006年の決勝戦、各メディアが駒大苫小牧の本格右腕・田中将大そっちのけで早稲田実業のハンカチ王子、斎藤佑樹ばかりを取り上げた過去はお忘れのご様子。

 玉川氏にしても「偏向報道」に怒るのは、自分の親を背後から撃つようなもの。大会を主催する高野連と朝日新聞社は「入場者数減少と減収」「公立校の苦境」「野球越境入学」という大問題を抱えているからだ。

 前回、2022年の決勝戦「仙台育英VS下関国際」のスタンドには空席が目立った。主催者発表の入場者数は3万1200人。

 本サイトで取り上げたように(8月23日公開記事)、昨年から入場券の購入方法が全席指定前売り、ネットとコンビニのみで取り扱い(空席があった場合は当日券を発売)に変わり、価格もプロ野球並みに値上がりした。

 おかげで前大会は決勝戦すら観客席が満員にならず、閉会式などガラガラ。コロナ前の2019年の総入場者数84万人と比べ、2022年の総入場者数は56万人と、およそ6割にまで落ち込んだ。

 しかも玉川氏の「郷土推し」には無理がある。登録選手が岩手出身者と秋田出身者(2名)で占められる花巻東ならまだしも、仙台育英の登録選手のうち、宮城出身者は5名。青森代表の八戸学院光星に至っては、青森出身者は2名しかいない。

 高校生が活躍の場を全国に広げ、有能な指導者を求めるのは自由だが、高校野球や高校サッカーを見ている方はおもしろくない。身勝手を承知で書くと、都道府県別の全国大会を謳う以上、池田や取手ニ、宇部商のような「地元の期待」を背負った出場校を見たいのだ。

 出場校の地元が応援団を編成して甲子園球場にやってくることもなくなければ、公立校推しのファンも足を運ばなくなり、甲子園球場の入場者数は減る一方。いつの間にか甲子園のアルプススタンドから郷土色が消え、野球部関係者と応援動員させられた高校生だけの、チンマリした応援団になってしまった。

 地元の横浜市・日吉商店街も盛り上がる慶應高校の応援席は「昭和のアルプススタンド」そのもの。毎年、高校と中学で野球に打ち込む子供たちが6割ずつ減少し、商業高校が廃校になる現状において、来年の大会にも地元と視聴者を引きつける「慶應みたいな話題校」が出てこないと、高校野球の大会運営はますます厳しくなっていくだろう。

(那須優子)

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