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記事全文を読む→井上尚弥の過密スパーリングに潜む影…ボクシング界死亡事故が問う「蓄積ダメージ」のリスク
この夏、ボクシング界を震撼させる悲劇が起きた。
日本ボクシング界に深い衝撃が走ったのは、8月2日に東京・後楽園ホールで開催された興行でのことだ。この日、リングに上がった2人の選手が、試合後に急性硬膜下血腫を発症し、相次いで命を落とした。東洋太平洋スーパーフェザー級王座に挑んだ神足茂利は8日に、日本ライト級王座決定戦に出場した浦川大将も翌9日に逝去した。
事態を重く見たJBC(日本ボクシングコミッション)は、「管理者としての責任を痛感」するとの声明を発表。OPBFやWBO-APのタイトル戦を12ラウンドから10ラウンドに短縮するなど、緊急対策に乗り出している。
この悲劇を巡る議論で焦点となっているのが、試合に至るまでの「蓄積ダメージ」だ。「亀田三兄弟」の父でトレーナーの亀田史郎氏は、「事故の多くはスパーリングでのダメージの蓄積にある」と指摘し、試合で倒れる根本的な原因が調整段階に潜んでいると警鐘を鳴らす。専門家の間でも見解は分かれるが、試合本番だけでなく、準備期間の負荷に光が当てられた意義は大きい。
その文脈で、4団体統一スーパー・バンタム級王者の井上尚弥の名前が挙がる。彼は実戦感覚を研ぎ澄ますため、極めて多くのスパーリングをこなすことで知られている。2023年12月のタパレス戦前には自己最多となる116ラウンド、翌年9月のドヘニー戦前にも100ラウンド超を消化した。これは、一般的な世界王者のキャンプにおける80~100ラウンドという数字を上回るものだ。プロ戦績30戦全勝(27KO)を誇り、試合での被弾が極端に少ない井上だけに、外傷の心配は少ないように見える。しかし、今回の事故が示したのは「ダメージは必ずしも試合中だけで蓄積されるものではない」という厳しい現実である。いかに無双状態の王者であっても、長期的なダメージ蓄積のリスクをゼロと断言することはできない。
井上は今年5月にはラスベガスでラモン・カルデナスに8回TKO勝利を収め、次戦として9月14日に名古屋・IGアリーナで同級WBA暫定王者、ム井上ロジョン・アフマダリエフとの一戦を控えている。井上のような超一流の選手が最高の舞台で輝き続けるためにも、ボクシング界は安全と強さの両立という課題に真摯に向き合う必要がある。ラウンド短縮といった制度改革に加え、スパーリングの量や強度、休養サイクル、脳神経系の定期検査といった現場レベルでの管理徹底が不可欠だ。何よりも優先されるべきは、選手の生命と健康である。
(ケン高田)
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